Juice Wrld / Legends Never Die

2019年12月8日。シカゴのミッドウェイ国際空港でオーバードーズにより命を落としたラッパーのJuice Wrld。一説によると死の直前の彼のプライベートジェットには銃だけでなく、およそ70ポンドものマリファナが積んであり、もちろんJuice Wrld自身も空港に降り立つ前から相当ハイな状態に仕上がっていたという。このエピソードだけ聴くと、なんともラッパーらしくてヤンチャで結構と思う反面、先週のPop Smokeに引き続き”遺作ブースト”とでも呼びたくなるセールスの爆発的な伸びに正直危機感も覚えてしまう。
そうなのだ。Juice Wrldの今作『Legends Never Die』もまた、Pop Smokeの『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』同様にセールスを伸ばしているのだ。そのきっかけとなったのは自身の死後から5カ月が経過した2020年4月24日。同日に今作からの先行シングル”Righteous”を発表すると、Trippie Reddをフィーチャーした”Tell Me U Luv Me”、またMarshmelloとは”Come & Go”、”Hate the Other Side”の2曲でコラボレーションしていたJuice Wrld。この現在のシーンにバッチリとハマる素晴らしいシングル4曲を契機に少しずつ『Legends Never Die』の全貌が見えてくるのだが、ここから驚異的な数字を叩き出す。なんとアルバム収録の21曲中、iTunesチャートでは1位から18位まで、Spotifyチャートでは1位から16位までをJuice Wrldの楽曲のみで独占してしまうのだ。このストリーミングが反映されたビルボードのアルバムチャートでも当然初登場1位を記録した『Legends Never Die』。しかもラッパーの死後のアルバムに限定すれば、1997年の2パックとビギーに次ぐ歴代3位の売り上げとなり、また7/25付のビルボード200においては、1位のJuice Wrldに加えて2位のPop Smokeに至るまで命を落としているという何とも皮肉な結果になってしまった。先程はこの状況を”遺作ブースト”と評したが、誤解しないで欲しいのは2人の若きMC達が例え存命でもワンツーフィニッシュを決めていただろうという事だ。それだけ両者共に間違いないアルバムをドロップしたし、2人の年齢からして向こう10年はスキルを磨き、しのぎを削っただろうと思うと残念でならない。確かにヒップホップというカルチャーの性質上、死と隣り合わせのスリリングな私生活が人を惹きつけるリリックに繋がるのは致し方ないのだが、やはり遺作と言う形でヒットを残すのはエンターテイメントとしては少し寂しいではないか。特にJuice WrldもPop Smokeも、まだまだ5枚くらいは新作を聴きたいと思わせるラッパーだったから尚更だ。R.I.P。
DJ YU-1

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