カナダ出身のラッパーであり俳優でもあるエンターテイナー、ドレイクが発表した新作「If You’re Reading This It’s Too Late」。今作は2月に配信リリースされて以降記録づくめの快進撃を続けてきたが、とうとうCDアルバムとしての発売が決まった。ドレイク自身は今作をミックステープと位置付けていたが、所属するレーベルYoung Moneyは17曲入りEPと主張し、親会社のCash Moneyはニューアルバムと主張し・・・ゴタゴタしたまま配信リリースのみで終わるかと思った矢先のCD化決定である。Young Moneyはタイガのアルバム発売延期といい、本当にアーティストと揉めるレーベルだが、炎上商法かと勘繰りたくなるくらい売り上げは好調である。何せこの「If You’re Reading This It’s Too Late」は全17曲中、なんと14曲がチャートのTOP 50入りしたのである!これはあのビートルズ以来、51年振りの快挙だそうだ。いくらなんでも売れ過ぎな気もするが、中身を聴いて納得させられた。
まず今作の全体像だがHIP HOPの良心的なサンプリングネタの宝庫といった内容になっている。しかも使用されているネタは故EAZY-Eにジニュワインやザ・ルーツ、ジョデシィ等、サンプリングネタとしては比較的新しい音源が使用されている。(中には古いネタもありますが)トラックメイカー的には隠れたマイナーな名曲をサンプリングするのも醍醐味かも知れないが、デジタル配信された曲を聴くような最近のリスナーには馴染みのある分かりやすいネタをサンプリングした方がウケが良いのだろう。この手法は下手をすると「セルアウト」のレッテルを貼られ、ネガティヴなイメージを持たれる事もある。しかしながら今作では元ネタのアーティストこそメジャーでもトラックの作り自体はアッパーな曲よりもシリアスな曲調が目立つ。セルアウトどころかアングラ寄りに聴こえるくらいだ。更にこのアングラ寄りのトラック達には、ドレイクの歌もラップも器用にこなすスタイルがうまくハマっていて聴く度に作品に引き込まれていく中毒性がある。(スタイル的にはMOS DEFが近いか)決してキャッチーな曲調でなくとも大ヒットしてしまうあたりはアメリカの音楽市場の懐の深さを見せつけられた思いだ。
(DJ YU-1)
- ホーム
- New Releases
- Drake / If You’re Reading This It’s Too Late