Release Date / 9 Aug. 2023
ソロデビューから数えて14枚目となるスタジオ・アルバムのタイトルが『シン・おはよう日本』。自身の1stアルバムのタイトルが『おはよう日本』(2004年リリース)だった訳だが、あれからシーンを取り巻く環境も大きく様変わりした。かつては妄走族の一員としてMCバトルの黎明期からステージを駆け上がってきた般若だが、彼の無限とも受け取れる語彙量の豊富さには恐れいる。そう、先述した通り本当に初期の頃のMCバトルの現場からマイクを握り、グループでもソロMCとしても数々のヴァースを蹴ってきた般若だが、まだまだリリシストとしての底が見えてこない事は今作を聞けば良く分かるだろう。アルバム冒頭の “ONE VERSE” では「つうか、45(歳)でラッパーなんて、、、」なんてラインも見受けられるが、きっと般若は還暦を過ぎてもラッパーでいるのでは?と思わされる程の言葉の熱量を感じとってみて欲しい。
と言う訳で、まずはアルバムから先行して発表された “ONE MIC” を聴いてみた訳だが、同曲から個人的に気になったパンチラインを挙げるとするならば「来年辺りは衣装はUNIQLO, GU / 中身が光ればなんでも良いッス」、「1000人よりたった1人に言いたい / 何ヶ所も痛いけど笑っていたい」あたりだろうか?このラインだけでも般若の人間臭さに惹かれる訳だが、きっと彼のバックボーンとしてあるであろう〈三軒茶屋の兄ちゃん感〉が妙に心地良かったりするのだ。そうそう、三軒茶屋と言えば般若と同郷でもあるトラックメイカー LO$CAT を起用したアルバムタイトル曲 “シン・おはよう日本” も必聴の予感。いやはや同曲は途中からトラックの上ネタがガラっと切り替わるのだが、複雑な展開を1曲にまとめ切ったLO$CATの手腕も般若のフロウの切り替わりもお見事。また、例の長期取材前の NORIKIYO の哀愁がリリックから漂う “プラネタリウム” , J-REXXXとR指定をゲストに迎え、これでもかと残念な姿をコミカルかつファンキーに演じきる “超たちがわるい” も秀逸だ。(上記の2曲は是非MVもチェックしてみて欲しい)
と、全11曲で37分と比較的に聴きやすいボリュームの割にガツンと耳に残る印象なのは、やはり般若の言葉のチョイスとフロウの熱量の賜物だろう。いやぁ、お世辞抜きで “ONE MIC” という言葉が本当に良く似合うMCなんじゃないかと。そして勿論いつか15枚目のアルバムも出るだろうし、般若と同年代のプレイヤーとしても多大なる刺激を受けました。感服。
(DJ YU-1)