V.A. / JUDAS and the BLACK MESSIAH 

昨年より世界規模で関心を集めているBlack Lives Matter(以下、BLM運動)だが、この一連の人種差別問題のルーツとも言える1960年代のブラックパンサー党の悲哀を描いた映画『JUDAS and the BLACK MESSIAH』がアメリカ本国を皮切りに全世界で公開される事となった。筆者は映画の批評に関しては専門外なので、本稿で映画の内容について言及するつもりは無いが、今作がブラックカルチャーに興味を持つ全ての人間に無条件でオススメしたいテーマの作品である事には間違いない。その根拠としては、映画『JUDAS and the BLACK MESSIAH』のサウンドトラックに参加したアーティストの濃厚さが充分に物語っている。もう、個人的にはソングリストを見ただけで興奮させられたくらいだが、中でも注目なのはシーンを代表する中心的MCが世代を超えて今作に参加している事ではないか?例えば近年のシーンでは、Lil Durkや故・Nipsey Hussle, G Herboといった次世代のラッパー達と、NasRakim, またはBlack ThoghtといったBoombapライクなベテランMCが同じ作品にクレジットされる事自体が稀有な例だと記憶しているが、今作ではそれが実現しているのだ。まさにBLM運動が、この世代間のプレイスタイルの違いさえも埋める力を秘めている事を証明したと言えるだろう。思い返せば1980年代の“N.W.A / Fuck The Police”や、2000年代初頭の“Dead Prez / Let’s Get Free”といったヒップホップを代表する問題作のバックボーンには、いつだってBLM運動のエネルギーが渦巻いていた歴史的な背景もある。だとしたら今作はどうなのか?うん、期待以上のクオリティだ。・・・って、これだけのメンツが集えば当然とも言えるのだが()

まずは、Nasの曲なのにタイトルがEPMDとか言う90年代ヘッズ殺しの“Nas / EPMD”を筆頭に、相変わらずのリリシスト振りが抑揚のあるトラックで演出されている“Black Thought / Welcome To America”、生前より噂されていたコラボがHit-Boyのプロデュースにより遂に実現した故・Nipsey Hussle & JAY-Z / What it Feels Like”、ホーン系のワンループがクセになる “G Herbo / All Black”、挙げ句の果てにはボーナストラックにて、通称〈ライムの神〉による映画のタイトル曲“Rakim / Black Messiah”が披露されていたりと、サントラ1枚を通じて完璧なポッセカットを聴かせてもらった気分だ。まぁサントラと言う性質上、一枚のアルバムとしての統一感に欠ける点は致し方ないのだが、このコロナ禍でよくぞここまでのアーティストを集めたと感服した。これがブラックカルチャーの底力なのか?もちろん熱心なヘッズ達には今作の必聴を推奨。

 

DJ YU-1

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