Kehlani / It Was Good Until It Wasn’t

Release Date / 8 May. 2020
2017年に発表したデビューアルバム「SweetSexySavage」がビルボードチャートにて最高3位を獲得すると、2019年にドロップしたMix Tape「While We Wait」も業界内で高い評価を得るなど順調なキャリアを歩み続けるシンガーのKehlani(ケラーニ)。ここまでの道のりは正に順風満帆な訳だったが、今作「It Was Good Until It Wasn’t」のリリースに当たっては、そのプロモーションにおいて苦渋の決断を迫られる事になった。いや、世界中がコロナ禍に見舞われている2020年現在では新作のプロモーションの難しさに直面しているアーティストはケラーニだけでは無いのだが、この逆境を上手く逆手に取ったという点では今作「It Was Good Until It Wasn’t」は非常に秀逸で鮮やかなリリースとなったのではないか?そう、周知の通り世界中で自粛ムードが高まる中では満足なプロモーションが期待出来ないのは当然の事で、アルバムのリリースの延期を迫られたケラーニ。ところが彼女が選択したのは、アルバム発売の延期では無く、自らの手でプロモーションを展開するという奇策だった。それは今作からの先行して発表された”Everybody Business”の時点からであり、なんと同曲のミュージック・ビデオはケラーニ自身が撮影と映像の編集まで担当しているという。なにもアーティスト自らがここまでせずとも時間をかければその道のプロに手掛けてもらえただろうに、なんとも思い切った事をすると驚かされた。そしてアルバムのジャケットの撮影もカリフォルニア州がロックダウンされる事を想定して、自宅の中庭?と思われるロケーションで極めてミニマムにシューティングされている。これが怪我の功名と言うか、ミニマムに展開されたプロモーションに加えてアンニュイな今作の楽曲達が時代の世相を反映したかのようなシンクロを魅せるでは無いか。今作のアルバムタイトルである「It Was Good Until It Wasn’t」(良くなるまでは、良かったんだけどね)はドレイクとの会話の中で生まれたと言うが、ケラーニ自身からもアルバムのコンセプトとコロナ禍とリンクさせる様な発言が目立つ事から今回のリリースの決行は決して無茶な見切り発車では無い事が窺える。そんな彼女に言わせると今作は自身のキャリアでも最も成熟された作品になっているとの事だが、この表現が大袈裟では無い事は聴いてみれはすぐに分かるだろう。そんな中でも個人的にはアリーヤの名曲”Come Over”のフックを引用した”Can I”がフェイバリットの今作「It Was Good Until It Wasn’t」だが、ビルボードの最新チャートでは初登場2位を記録となかなかの滑り出し。しかもタイトルの名付け親であるドレイクの「Dark Lane Demo Tapes」を3位に蹴落とすと言うオマケつきだ(笑)これはオススメです。
DJ YU-1

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