Marvin Gaye / More Trouble

Release Date / 14 April 2020
およそ48年の歳月を経て、歴史的名盤がリイシュー。しかもアナログLP盤でだ。この仕様は昨今のアナログレコードの再ブームに配慮したのかは定かではないが、コレクターズアイテムとしてはもちろんのこと、市場に出回る枚数によってはプレミア物のレア盤化する可能性すらある。さて、その歴史的名盤とは何かと言えばマーヴィン・ゲイの「More Trouble」だ。もうね、かのマーヴィン・ゲイの名作を再発するにしても映画『Trouble Man』のサントラのアウトテイク集をチョイスするとはツボを突きまくっております。同作は1972年のリリース以降、各所で散々語られているだろうが、あえて2020年からの目線で説明させてもらおうか(笑)まず今作発表の伏線として1971年の大傑作「What’s Going On」の存在は無視出来ないだろう。この「What’s Going On」の成功により自身のアーティストとしての地位を確固たるものにしたマーヴィン・ゲイは、名門中の名門レーベルであるモータウンから自身の音楽制作に関わるクリエイティブ面の全権を勝ち取る事に成功するのだが、この全権を揮って初めて発表した作品が映画『Trouble Man(邦題, 野獣戦争)』のサウンドトラックであり、このサウンドトラックの未収録音源を集めた作品こそが、今作「More Trouble」なのである。これがどういう事かお分かりだろうか?モータウンクラスのレーベルから制作活動の全権を委任されるだけでもとんでもない事なのに、この全権を使って好き勝手に作ったサウンドトラックの中から更に好き勝手にセッションして未発表となってしまった作品集が今作な訳だ。ねぇ?これだけでも聴きたくなってくるでしょう?そして本家「Trouble Man」と「More Trouble」を聴き比べてみると良く分かるが、今作は生音ならではの遊び心というか筋書きの無いセッションが生み出す偶然性を一つの作品に詰め込んだ面白さに満ち溢れているのでは無いか?この面白さは特に”T Plays It Cool”のアウトテイクやタイトル曲である”Trouble Man”のロングVer.あたりで顕著であり、稀代の名プレイヤー達がレーベルから指図を受ける事なく本当にやりたい事の旨味を凝縮させた作品集はブラックミュージックの歴史の教科書かの様だ。そして、この教科書かの存在感を放つ「More Trouble」は、2012年にCD化されているのだが、実はアナログレコードでのカッティングは今回が初の試みである。先程も述べたが大量の枚数が市場に出回るとは思えないので好事家の方々には今作を早めに入手しておく事を強くオススメする。だって早くしないとプレミア価格になってしまうかもよ?(笑)
DJ YU-1

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