Release Date / May 25 2018
東海岸を代表するラッパーとして、はたまたファッション・アイコンとしての彼の活躍ぶりは今更説明するまでも無いだろう。ソロ作品としては今作が自身3枚目のスタジオアルバムという事になる。そう、「Testing」という問題作をドロップしたばかりエイサップ・ロッキーというMCは、ソロとしてもエイサップ・モブの中心人物としてもシーンに充分な爪痕を残してきた。当然、このエイサップ・ロッキーの持つラップのスキルに疑いの余地は無い。そして、このような実績を持つラッパーだからこそ?実現できた今作のサウンドの攻めっぷりはとてもスリリングなものに仕上がっており、彼の仕事の充実ぶりも伺える。
そんな今作「Testing」のサウンドプロダクションを敢えて一言で表すならば〈サンプリングの進化系〉とでも言おうか。うーん。何というか、これまでのサンプリング中心のヒップホップといえば、どこかオールド~ミドルスクールの匂いのするトラックをイメージする人も多いのでは?ところが今作はどうだろう?あくまで個人的な見解だが、今作のプロダクションはサンプリングに重点を置いているにも関わらず、サンプリングレスな新譜っぽさは感じないだろうか?例えば今作からの先行シングル‘‘A$AP Foever’’では、同曲にゲスト参加しているモービーの‘‘Porcelain’’をサンプリングし、アルバム収録の‘‘Hun43rd’’ではなんと故2パックが率いたサグライフの‘‘Cradle To The Grave’’を大胆に引用、さらにはローリン・ヒルのアンプラグド音源である‘‘I Gotta Find Peace Of Mind’’使いの‘‘Purity’’まで・・・こうして活字に起こすと今作のプロダクションは王道のネタ使いの様に感じるが、いざ実際の曲を聴いてみると全く新しい感触に包まれる。王道どころか、かなり実験的なサウンドなのだ。これは米Complex誌のインタビューでのロッキーの発言だが、エイサップ・モブの頭脳でもあるエイサップ・ヤムスを2015年に失ったロッキーが試行錯誤を重ねた結果に産まれたのが「Testing」の音であり、今作は敢えて実験的なサウンドで勝負した彼の趣旨のコメントが非常に興味深い。言うならば〈サンプリング〉という極めてシンプルな手法ひとつをとってもマーク・ロンソンやブルーノ・マーズに代表されるオーセンティックなアプローチとは真逆の解釈となるあたりが本当に面白いではないか。そして、この両極端な解釈の双方共にヒップホップの醍醐味が詰まっていると感じる。・・・まだ今作のセールスの情報までは入ってきてはいないが、先ずはエイサップ・ロッキーの攻めの姿勢にリスペクトを。
(DJ YU-1)
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