Release Date / July 6 2016
黒人よりもブラックミュージックしているアジア人のR&Bシンガーを御存知だろうか?まるでありがちなCDショップのポップの様な煽り文句だが、彼の経歴やこれまで発表してきた楽曲達、そして今作「In The Meantime」を聴けば決して大袈裟な表現では無い事が理解出来るだろう。その男の名はジェフ・バーナット。彼のルーツはネバダ州出身のフィリピン系アメリカ人である。このジェフがなんのコネも持たず、オーディションを受けることも無くデビューを果たし、シンガーとしての地位を築いた事実はSNS / YouTube世代特有の行動力の賜物と言えるだろう。2009年あたりからYouTube上でスティービー・ワンダーやドレイクのカバーを公開していたジェフ・バーナットはネット界隈で少しずつ注目を集め、2011年には自主制作のオリジナルアルバム「The Gentleman Approach」をリリース。YouTubeで作品をアップしているアーティストが自主制作の作品をリリースする流れは日本でも珍しくはないが、ジェフの「The Gentleman Approach」の様にitunesのR&Bチャートで最高5位に付けてしまうような番狂わせは中々無いだろう。ジェフ自身はこのセンセーショナルなデビューをインターネットのパワーだと評したが、当然の如く作品自体の魅力が無ければ生み出されないヒットであることは間違いない。本稿の冒頭でジェフ・バーナットを‘‘黒人よりブラックミュージックしているアジア人’’と表現したが、彼の音楽は正にオーセンティックなR&Bである。例えばブラックストリートやKC & ジョジョが活躍していた時代のアーティストに感性が近いように感じるのだ。
そんなジェフが新たに作り上げた今作「In The Meantime」では、更にオーセンティックさに磨きがかかっている。アルバム全体を通してBPM遅めのメロウな曲に片寄りがちなところは気になったが、今作のどこを切り取っても純R&B。先入観無く聴いていたら彼の肌の色が何色かなんて気にならなくなるくらいだ。実際のところジェフが人種の壁を乗り越えて、これからのR&Bシーンでどれだけの地位を確立出来るかは未知数だが、もっとアップテンポな曲や、トップクラスのラッパーとの絡み等も聴いてみたくなった。甘い歌声にトレードマークの蝶ネクタイと、すでにキャラは充分立っている。これから何処まで上がっていくのか楽しみなシンガーである。
(DJ YU-1)
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- Jeff Bernat / In The Meantime