Release Date / 15 Oct. 2021
米・ビルボード200にて最高1位を獲得した前作『So Much Fun』から約2年振りとなるスタジオ・アルバム『Punk』を発表したラッパーの Young Thug 。本人のスタジオ・アルバムとしては2ndアルバムにあたる今作だが、これまでにも数々のミックステープをリリースし、また今年の4月には自身のレーベルである〈YSL Records〉からコンピレーションアルバム『Slime Language 2』まで発表している男だ。とても今作が2枚目のアルバムのアーティストとは思えない濃いキャリアを過ごしている事は言うまでもないだろう。また、今作も彼のキャリア同様に濃厚で尚且つ革新的なヒップホップに満ち溢れており、聴き手の脳を揺さぶってくる問題作となっている。
そんな今作は現在、非常に勢いのあるラッパーのアルバムなだけあって、クレジットを見てみるとプロデューサーだけでなくゲストにも豪華な名前がズラリと並ぶ。ここまでは予想通りなのだが、サウンド面ではトラップ一辺倒と言う訳ではなく、アコースティックな上ネタを多用したビートの多さにも驚かされた。例えば良い意味で Metro Boomin らしくないトラックとなった “Stupid/Asking” や、Gunna をフィーチャーした “Recognize Real” , 故・Mac Millerをゲストに迎えた “Day Before” などで響き渡るアコースティックなサウンドの心地良さは、シリアスなトラップを展開した前作『So Much Fun』とは明らかに音色が違う。これらのサウンドは所謂サウス産ヒップホップとは一線を画す鳴り方をしているのだが、なかなかどうして Young Thug のフロウとの相性が抜群に良い。いや、振り返ればアトランタ発のトラップがヒップホップ・シーンの覇権を獲ってから数年が経過したのだが、ここにきてトラップもネクスト・レヴェルに昇華したのかと思い知らされる作品となっているくらいだ。そして、この素晴らしいアルバム中で敢えてハイライトを一曲挙げるとするなら、J.Coleと T-Shyne をフィーチャーした”Stressed” を推したい。先述したネクスト・レヴェルのトラップに Young Thug の歌うフックもタイトなのだが、負けじと J.Cole のヴァースもキレッキレに研ぎ澄まされている。(個人的には J.Cole の2021年のベスト・ヴァースだ)
兎にも角にも『Punk』は Young Thug にとって2作連続でのビルボード1位も納得の会心の一撃と言えるのだろうか?以前としてアトランタ産のヒップホップに勢いがある事を証明する1枚だ。必聴。
DJ YU-1