Release Date / 22 June 2023
2022年5月。Young Thug や Gunna を筆頭とする〈Young Stoner Life Records〉所属のラッパー総勢28人が、米・RICO法に違反したとして逮捕された事件は記憶に新しい。本稿ではRICO法については割愛させてもらうが、分かりやすく言えばストリートでのギャング活動や営利目的でのドラッグ所持を理由に立件されたといった所だ。いかにもラッパーらしい理由での逮捕は今更珍しい事案でもないのだが、1つのレーベルのアーティスト達を丸ごと狙い打ちしたかの様な逮捕劇は流石にセンセーショナルで、現地でも大々的に報道された。そして、それは同時に Young Thug というラッパーがリリックに綴ってきた生き様が、決してフェイクなんかでは無くリアルである事の証明ともなった。これは警察にとっては非常に皮肉な事なのだが、この逮捕劇が Young Thug や Gunna に対するストリートからのプロップスを更に上昇させる起爆剤になっちゃったりして?そんな中ドロップされた今作『Business Is Business』が、ある一定の層から熱狂的に支持される事は想像に難くない。
そう、今作『Business Is Business』は正に生き様。ストリートでのサバイヴをビジネスと言い切れる説得力を身体を張って魅せた訳だ。更にアルバムの内容も隙間がない。今作に収録された全15中の内9曲を手掛け、アルバムの総合演出に名を連ねる Metro Boomin のトラップビートと Young Thug のフロウとの相性の良さは説得不要だろう。例えば Drake がゲストで参加した “Oh You Went” , 不穏なイントロが今作の空気感にマッチした “Uncle M” , 21 Savege との共演はもはや鉄板と感じる “Want Me Dead” , 浮遊感のある上ネタとライムがタイトに絡みつく “Mad Dog” , これらの楽曲は全て Metro Boomin のプロデュースだ。これだけでも完成度の高いアルバムである事が伺えるのだが、今作にはさらに聞き捨てならない情報がある。この Young Thug の『Business Is Business』には Metro Boomin ヴァージョンがあり、そちらには故・Juice Wrld のヴァースも追加されているのだとか。いやいや、そちらも普通に聴きたいくらいじゃないですか?既に billboard200 では初登場2位以上が確定している今作だが、まだまだ Young Thug の動向から目が離せないだろう。そもそも集団逮捕の直後に発表したアルバムのジャケ写が裁判所でのロケーションだからね。(RICO法さん、おちょくられてますよ〜)
最後に、、、彼を始めとするヒップホップアーティストの犯罪行為を肯定するつもりは無いのだが、逮捕が全くダメージにならないアメリカのエンタメ界には感服した。だって、救いようのない劣悪な環境で生まれてしまったストリート育ちの若者にとっては、今作みたいなサグなアルバムは聖書みたいな物でしょう??これもまた音楽の力なのだろうと思う次第だ。
DJ YU-1