Release Date / 30 Sep.2022
早いものでヤング・ギャングスタ(YG)と呼ばれた男も三十路を超えて、すっかりヤングでは無くなってしまった(笑)いや冗談はさておき、彼のラッパーとして歩んできた軌跡は説明不用なくらいの活躍ぶりだった訳だが、この度リリースした新作『I GOT ISSUES』では自身のキャリアの集大成と言わんばかりに円熟味を増したラップのスキルを披露。そして筆者は、このニューシット達にすっかり魅了されてしまったと言う訳だ。
まずは不穏な上ネタがループするトラックに YG のリリックがドープに絡みつく “Issues” からスタートする今作は、様々な視点からヒップホップを楽しめる全14曲が収録されている。なんと言ってもアルバム前半のハイライトは、Mary J Brige のクラシック “Be Happy” を大胆にサンプリングした “Toxic” で間違いないだろう。そう、こんな大ネタを見事にリメイクした DJ Swish の手腕も去ることながら、元ネタ同様の恋心をラップに込めた YG の技量も流石の一言。この男はどうやら、そこら中にいるギャングスタ一辺倒のMCとは一味違う様だ。と思いきや “No Love” では、西海岸出身らしくGファンク色たっぷりのビートをルーズに乗りこなし、J.Cole や Roddy Ricch, Nas といった大物ゲストが相手でも引けを取らないマイク捌きまで魅せてくれた。また、アルバムの後半に収録されている “Drink to This” でのヒリヒリと焼け付く様な殺伐とした歌詞や、”Alone” での叙情的な表現は〈ブラッズ〉という稀代のギャング組織の内部でサバイブしてきたYGだからこそ生み出せたリリックなのかも知れない。(ストリートを生きるブラック達の言葉達は本当に痛みを伴う)うん、まさに14曲のトラックリストを最後まで飽きさせる事なく聴かせるYGのラップは、先述の通り自身のキャリアから培った円熟味による賜物だろう。更には、このラップに加えて所属する Def Jam のプロモーションが加わる訳だから、そりゃ売れるよねぇ。ちょっと怖いくらいに完璧な流れに感服しました。
ちょっと意外だったのだが、今作は自身初のbillboard200でのチャート1位獲得にも期待がかかる1枚だ。
DJ YU-1