Release Date / March 4th 2015
レーベル間を超え、旬な人気R&Bアーティストが参加した定番コンピレーションの第6弾、全39曲の2枚組。各々の盤に「After Sunset」「Before Sunset」とコンセプトが分かれている。Michael Jacksonから幕を開ける今作は、まさに直球勝負のR&Bばかりといった構成になっている。近年のEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の隆盛によりジャンルのボーダーレス化が進んだ現在の音楽シーン。R&BやHIP HOPも例外では無く時代と共にEDMを取り入れ進化してきた。この昨今のEDM化の流れ自体を否定するつもりは無いが、本来ブラックミュージックが持つ「ソウル臭さ」や「黒っぽさ」が薄れてきた事もまた事実である。しかし今作の収録曲達は、そんな時代の流れにカウンターを浴びせるようなソウル臭さに満ちた作品ばかりだ。70〜80年代のディスコから始まり、90年代にHIP HOP SOULなる手法が編み出されたあの時代……その当時の空気を最新の技術で再構築したような楽曲に思わずニヤリとさせられた。
例えば今作のBefore Sunsetに収録されているJ COLE feat. TLCのCrooked Smileは90年代から続くHIP HOP SOULの手法で構成されたような曲だが、個人的には古臭さは全く感じられなかった。くだけた言葉で言えば「そうそうコレ!コレがR&Bだよなぁ!」そうリスナーに思わせる王道のブラックミュージックの2015年版なのである。こういった曲達はEDMに慣れ親しんだ最近のリスナーには、むしろ新しいと感じれるのでは無いだろうか。
歴史を遡れば70〜80年代にはアフリカバンバータに代表されるエレクトロHIP HOPの流行があり、2000年代前半にはサンプリング全盛期の最中にスウィズビーツがシンセサイザーの名機トライトンのプリセット音源を大胆に使いヒット曲を連発したりと、「エレクトロニック」な音はシーンを度々席捲してきたのだ。何も近年のEDMが初めての事では無い。そして、ご多聞に漏れず時代が繰り返すというなら2015年は王道な黒い音の復権の年になるかもしれない。
尚、本作は原点回帰の曲ばかりだけではなく、もちろん現在進行形のR&Bを感じられる楽曲も収録されている。(個人的にはAfter Sunsetの方に収録されているPITBULLとNE-YOによるTime Of Our Livesがその筆頭)
最後に今回のコンピレーションだが、長年のリスナーも納得させつつ2015年の空気も取り込んだ非常にバランスが取れている内容で「コレ一枚でカンペキ!」の看板に偽りの無い一枚。R&B、HIP HOPの今後の動きを知る為にも役に立ちそうだ。(DJ YU-1)