Release Date / Mar. 23 2018
トニ・ブラクストン名義としては、およそ8年ぶりとなる作品にも関わらず、彼女からはそこまでのブランクを感じないのは、2014年に発表したベイビーフェイスとの共同アルバム「Love, Marriage & Divorce」の大ヒットがあるからに他ならない。だが90年代に一世を風靡したトニ・ブラクストンも長らく表舞台から遠ざかっており、「Love, Marriage & Divorce」までの道のりも決して平坦なものではなかった。様々な難病を抱え、更には2度にもわたって破産を経験するなど文字通り波瀾万丈なキャリアを歩み、一時は引退まで仄めかしていたトニ・ブラクストン。そんな彼女を救ったのは先述の通りベイビーフェイスだ。自身のデビューからブレイクに至るまでをプロデュースし続けてきたベイビーフェイスが用意したデュエットアルバム「Love, Marriage & Divorce」はトニ・ブラクストンというシンガーを再びシーンに引っ張りだしただけでなく、2015年の第57回グラミー賞において最優秀R&Bアルバムという栄冠までもたらした。翌年、これに乗じてベイビーフェイスが自身のアルバムとしては10年ぶりとなる「Return Of The Tender Lover」を発表したとなれば、次はトニ・ブラクストンのソロ作品も聴きたくなるでしょう?という事で2018年3月23日に今作「Sex & Cigarettes」が発表されたわけだ。まずは昨年にリリースされた今作からの先行シングル‘‘Deadwood’’はフレッド・ボールをプロデューサーに迎えた大人のバラード。アルバムのジャケットを見ても分かると思うが50歳を迎えたとは思えない色気を纏うトニにピッタリの1曲だ。もちろん盟友のベイビーフェイスも今作に参加しており、こちらは‘‘FOH’’と‘‘My Heart’’をプロデュース。またタイトル曲の‘‘Sex & Cigarettes’’はトニ・ブラクストンともベイビーフェイスとも関わりの深いアントニオ・ディクソンが担当で、同曲での彼女の歌声はとても引退を考えていたシンガーのものとは思えない力強さだ。今作は他の収録曲と合わせても全8曲と、アルバムと呼ぶにはややタイトなトラックリストだが、トニ・ブラクストン名義の新曲が聴けただけでも意義のある一枚か。引退しなくて本当に良かった。
(DJ YU-1)
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