T.I. / The L.I.B.R.A

Release Date / 16 OCT. 2020
サウス・シーンを代表するラッパーであるT.I. が、前作『Dime Trap』からは約2年ぶりとなるスタジオ・アルバム『The L.I.B.R.A』をリリースした。

そんな今作は、なにやらジャケットのアートワークやタイトルからも” LIBRA = 天秤 ”を連想させる様な作品かと思わせておいて、実は ”L.I.B.R.A” の意味とは〈Legend Is Back Running Atlanta〉の頭文字から取った造語だと言う。

まぁ、自らの作品のタイトルに〈アトランタのレジェンドの帰還〉と命名してしまうとは随分と強気な様子だが、当然ながらT.I. にはレジェンドを自負する権利がある事くらい周知の事実だろう。むしろ現在のサウス・シーンの隆盛の礎を築き上げ、通算で11枚目となるアルバムをドロップしたT.I. に対抗できるアトランタ産のベテランラッパーなんてLil Wayne くらいのものだ。

さて前置きはこの辺にしておいて本題に入るが、今作『The L.I.B.R.A』は T.I. 曰く〈トラップ、ギャングスタラップ、パブリック〉の3つの要素を1枚のアルバムにまとめた作品だという。そして、その形容が決してハッタリなんかでない事は本編を一周聴いてみてすぐに気付かされた。なんといってもバランス感がズバ抜けて良いのだ。

まず、今作では最多となる5曲のトラックをプロデュースしたHitmaka の楽曲達には、Tokyo Jetz、Lil Baby、21 Savage といった主戦級のMCから大ベテランのSnoop Dogg までもが参戦して極上のトラップに彩りを加え、そしてNotorious B.I.G の超絶クラシック ”Hypnotiz ” のサンプリングネタである Herb Alpert の ”Rise” 使いが光る ”Hypno” では、年季の入ったヘッズも納得させる流石のネタ使いに思わず首を縦に振らされてしまった。

また、Rick Ross をフィーチャーした ”Respect The Code” では、ストリートに生きるブラザー達を哀愁たっぷりに描写するリリカルっぷりまで披露して魅せたT.I. 。いやぁ全20曲に渡るボリュームをこの絶妙なバランス感覚で演られちゃうとね、、、もう隙がありません!

正直に言うとビルボード200 のチャートは最高18位と結果的には〈アトランタのレジェンド〉として少し寂しい数字にはなってしまったのだが、そんなことは些細な事だと思える満足感だ。(この結果は今作がEMPIREからインディペンデントで発表された事も一因かもしれない)

そして、なによりも既にフルアルバムを10枚もリリースしているのにも関わらず、T.I. の衰えないクリエイティビティには最大限の敬意を払わなければならないだろう。

DJ YU-1

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