Release Date / 15 April 2022
その名の通り、メンバー全員がスウェーデン出身で尚且つ各々が著名なDJ(Axwell, Steve Angello, Sebastian Ingrosso)であるスーパー・ハウスユニット = Swedish House Mafia。まず彼らの活動で特筆すべきは、2010年に発表した『Until One』、2012年の『Until Now』が2枚ともUKチャートにてゴールドディスクを獲得し、ユニットとしては4枚目となるシングル “Don’t You Worry Child” で 米・ビルボードシングルチャートの最高6位まで駆け上がった事ではないだろうか?その勢いでスウェーデンから世界中のダンスミュージック・シーンの覇権を取るかと思われた3人だったが、各々のソロ活動を優先する為に2013年には活動休止を余儀なくされてしまう。そして、その後の彼らの記念すべき再結成が2018年の〈Ultra Music Festival〉(以下 ウルトラ)である辺りが何とも皮肉めいた物語ではないか。そうなのだ。彼らの絶頂期である2010年代初頭には〈ウルトラ〉の隆盛により一大勢力を築いた EDMシーンもユニットが再結成した2018年には全盛期から比べると少し落ち着いた代物になっていたのだ。もし彼らが活動休止しなかった世界線の〈ウルトラ〉界隈がどんなシーンになっていたかは知る由もないが、再結成した Swedish House Mafia の肩の力は、良い意味で非常に抜けている事は確かだ。
そう、その再結成が成された2018年から4年。数々のツアーに参加しながら制作された今作『Paradise Again』は先述の通り良い意味で肩の力が抜けている。メンバーの Steve Angello曰く「アルバムでは誰も期待していない事をする。楽曲のストリーミング再生数も気にしない。」との事だそうだ。その素晴らしいアイデアは、シーンでのブランクが長いユニットのリユニオンなのだから間違っていない判断だと思うし、セールスやリスナーからのリアクションを気にせずに楽曲を制作できたなら、それこそアーティストとしても幸せな事である。だからこそ、肩の力を抜いたからこそ今作『Paradise Again』は充実の力作となったのかも知れない。彼等らしいスタイリッシュな四つ打ちの “Time” から幕を開ける今作は、Sting が Police 時代に歌った名曲 “Roxanne” をオマージュした “Redlight” で Sting 本人を登場させたかと思えば、Ty Dolla Sign、The Weeknd、A$AP Rockyらブラックミュージック勢との異種格闘技戦までもを見事にこなしてみせた。中でも個人的に驚いたのは A$AP との “Frankenstein” で、同曲のBPMをHIP HOP寄りに合わせた事で彼のラップを最大限に引き立てる懐の深さまで魅せてくれたではないか。
うん。先程は Swedishのメンバー達が楽曲の再生数を意識してないと述べたが、本人達の意思とは裏腹にかなりウケるアルバムになると思われる。『Paradise Again』は、それだけ素晴らしいアルバムになったし、今作を引っ提げて敢行されるというワールドツアーも非常に楽しみだ。
DJ YU-1