Snoop Dogg / I Wanna Thank Me

Release Date / 16 Aug. 2019
これはスヌープ自身にとっても彼のファンにとってもメモリアルな1枚になりそうだ。それは、言うまでも無く西海岸のヒップホップシーンでは最重要人物の一人であるレジェンドMC = スヌープ・ドッグが新たに発表したスタジオ・アルバム「I Wanna Thank Me」が、全22曲というボリュームにも関わらずその内容は薄まることは無く、むしろ美味しいネタてんこ盛りの素晴らしい作品となっているからだ。まず最近のスヌープといえば前作「Bible of Love」が、まさかのゴスペル作品だったことが記憶に新しい。確かにラッパーとしては勿論のこと、今やレゲエもこなせる時事タレントとしてのプロップスも得ている多才なスヌープであるが、「Bible of Love」でゴスペルチャートでも1位を掻っ攫ったことは流石に衝撃的だった。もはや何でも出来すぎて次はどこに向かうのか?もしかしてヒップホップにはもう戻らない?なんて心配したリスナーもいたかも知れない。だが、バックボーンはゴリゴリのギャング上がりでストリート育ちのスヌープ・ドッグだ。「I Wanna Thank Me」では、前作とは打って変わって自身の集大成とも言えるMCっぷりを披露。中でも個人的に刺さった曲を挙げていくと、全盛期のDr.ドレを思わせるG-Funk全開の‘‘Countdown’’をプロデュースしたのがスウィズ・ビーツだったり、レゲエではスヌープ ・ライオンとして鳴らしたスヌープなだけにボブ・マーリーのネタで攻めた‘‘So Misinformed’’、またニュージャック・スウィング節が最高に渋い‘‘Do You Like I Do’’、タイトルの通りドゥー・ワップがリズムを刻む‘‘Doo Wop Thank Me’’がスキットの役割を果たしたりと、もう〈ブラックミュージック全部乗せ〉みたいなアルバムになっているではないか!だが、やはりヒップホップ的トピックスとして外せないのは、西海岸では長らく抗争に明け暮れている2大ギャング組織であるクリップスとブラッズの和平を促がす衝撃の一曲‘‘One Blood, One Cuzz’’(かく言うスヌープ自身はクリップス出身)とアルバムタイトル曲でもある‘‘I Wanna Thank Me’’の2曲では?特に‘‘I Wanna Thank Me’’はスヌープがハリウッドの殿堂入りを果たした自分自身に向けて書いた労いのリリックなだけに気合いの入りようが他の曲とは一味違う。だって曲の締め括りに今は亡きネイト・ドッグの‘‘Next Episode’’でのラインを引用って……いやぁ、聴くだけで伝説の2002年が蘇りますねぇ!!
(DJ YU-1)

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