R. Kelly / Write Me Back

Release Date / June 25
ライト・ミー・バック
2010年に発表した「Love Letter」から2年ぶり、11作目となるR. Kellyプロデュースによるアルバム。駆け出しの90年代以降、時代の最先端を追う側から、ついにはR&B界の頂点に君臨し、次の時代を作る先駆けへと方向を導いてきた彼だが、前作辺りからは一歩引いて、自身が最も目指すべく道へと舵取りを変えた。そして前作からも更に自身の音楽性を確実に見出した作品が本作。デビュー当時から彼の音楽に愛してきた私には、時代を追っていた時代、そして作り上げた時代、それらを経験した23年を経て、ようやく我が行くべき道にたどり着いた作品が「Write Me Back」というアルバムだと確信する。アメリカ人のパーティーでは必ずリクエストが入る”Happy People”(2004年)だが、本作の先行シングル“Share My Love”では、まさに世界中の人々を幸せにさせる曲でアッと驚かせた。このスタイルこそはRケリーの突出した才能であり、現在の音楽シーンで彼以外に誰がこのようなソウルフル且つ、人々を心の底から幸せさせる曲が書けるのだろう?全体的にストリングスのアレンジが素晴らしい、フィリーソウル的なアプローチを感じるが、クレジットを見ると実際に生の弦楽器でレコーディングされているようで、Rケリーの独自性とクラッシックなソウルの融合が、最高の聴きどころである。米音楽情報誌ではBarry White やMarvin Gayeなど70年代音楽への回帰とほのめかされているもの、このスタイルは無二であり、シカゴ・ステッパーズというオリジナルをバックグラウンド背負うKelly氏の本領を発揮した楽曲でいっぱいだ。セカンド・シングル”Feelin’ Single”は3月29日に現地でリリース。こちらは非常に軽快な曲でBill Withers’の“Lovely Day”を控え目にサンプリングした曲。本人の実体験かは不明だが、曲調とはウラハラに大人なやるせな話を歌っており、涙の一人ダンスには最高だ。ケリー氏のSpinners(スピナーズ)好きはデビュー当時から承知ではあったが、収録曲の“Lady Sunday”は”I’ll Be Around”にインスパイアされた曲のようで、憎らしくも彼の伝統を引き継ぐ曲作りの素晴らしさにドッキリだ。更に4曲が追加されたデラックス盤には、誰が聞いてもマイケル・ジャクソンが乗り移ったような歌い方が印象(恐らく意図的に)な“You are My World”が収録。現在は第一線から退き、ゴスペル界で活躍する名プロデューサー、Warryn Campbellをゲスト制作陣に迎えている点も興味深い。前作のLove Letterツアー後に発覚した、喉の腫瘍摘出手術からカムバックし、ここまでの作品を作り上げる生命力。2013年には「Black Panties」というふざけた?タイトルでアルバムを制作中とのこと。我々が生きている時代では間違いなく歴史的なソウル・アーティストであるR. Kelly。彼の制作意欲が続く限り、すがりついて見守りたい。

PAGE TOP