Naughty By Nature / Poverty’s Paradise 25th Anniversary Edition

Release Date / 29 Nov. 2019

90年代を代表するヒップホップ・グループであるノーティ・バイ・ネイチャー(以下 ノーティ)。彼らの最大の功績は何と言っても幅広い層にヒップホップを届ける為の裾野を拡大した事にあると思う。そう、世間的にはヒップホップがまだまだアウトサイダーだった頃の90年代前半にビルボードのトップ10に食い込んでみせた”O.P.P.”や、歴代でも屈指のパーティ・アンセムと化した”Hip Hop Hooray”辺りのヒットチューンはノーティの事をリアルタイムで知らない世代のヘッズでも聴いたことがあるであろう文句なしのクラシックだ。そしてノーティが幅広い層に長く聴かせる曲を量産出来た最大の要因は、間違い無く彼らのキャッチーさにある。例えば”O.P.P.”で言えばジャクソン5の代表曲”ABC”をサンプリングするキャッチーさ。”Hip Hop Hooray”で言えば1度聴けば誰でも覚えられるフックのキャッチーさ。当時のノーティは、このキャッチーさを武器に非黒人系のリスナーをヒップホップに引きずり込む事に見事に成功するのだが、皮肉な事に売れれば売れる程、ストリートからは逆風が吹いていた様にも思う。何故ならあの時代のストリート志向のヘッズ達から支持されていたのはウータンクランやモブディープ、ギャングスターといった所謂ハードコア・ヒップホップを体現するグループ達。今となっては90年代のNYの空気感を推し量る事は出来ないが、ハードコア路線のグループに比べるとポップなサウンドを標榜とするノーティがセルアウトのレッテルを貼られていた事は容易に想像がつく。だがヒップホップと言えど商業音楽である。そして商業音楽である以上は、1人でも多くの人に聴いて貰う為にセルアウトに走るグループが今後のシーンの為にも必要だったのではないか?そこで彼らが出した答えが1995年の傑作「Poverty’s Paradise」だ。この「Poverty’s Paradise」ではノーティのヒップホップに対する葛藤が見え隠れしながらも、ストリートで生きる事よりもエンターテイナーに徹する決意表明の様なもの感じるのだ。その中でもシングルカットされた”Clap Yo Hands”での軽妙なフックや、The Mastersの”Find Yourself”をサンプリングした”Feel Me Flow”のポップなトラックはノーティの真骨頂とも言える聴きやすさがあり、この聴きやすさを追求した今作が商業音楽としてどれだけの成功を収めたかは周知の事実だろう。そして、グラミーでは最高の栄誉であるベスト・ラップ・アルバム賞にも輝いた「Poverty’s Paradise」が、めでたくリリースから25周年を迎え、これを記念してリマスター版が再リリースされる事となった。既にiTunesなどではリマスター版の配信が始まっているのだが、注目はアナログの2LP盤の方か?こちらの盤は少々値が張るのだが、なんとボーナストラックが7インチvinylにカットしてあり、2LPと言いながらも実質は3枚組になっているという仕掛けがあるのだ。今年の話題で言えば日本でもタワーレコードが新宿にアナログ専門店の〈Tower vinyl〉をオープンさせる等、世界規模でアナログレコードのブームが再燃している中でのこのギミックは流石というか、相変わらずノーティはエンターテイナーなんだなと感じて嬉しくなってしまった。後はMCのトレッチとDJのケイ・ジーが和解さえしてくれれば、ニューアルバムの発表も夢ではないのだが(汗)

 

DJ YU-1

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