Logic / Supermarket Soundtrack

Release Date / 26 March 2019
さて、この前例のないサウンドトラックを一体どの視点から切り取れば良いのか?なんと言っても今作は想像の斜め上を行く裏切りっぷりで、凡庸な筆者の頭ではこれを一度聴いたくらいでは受け止め切ることが出来なかった(笑)まず本稿の主役は、2017年に3rdアルバムである「Everybody」で自身初となるビルボード・アルバムチャート1位を獲得した事により若手ラッパーの1人から一躍スターダムへ駆け上がったMCのロジックなのだが、彼がバディ・ホールという名義で『Supermarket』という小説を執筆した事が今回のプロジェクトの始まりである。まだこの小説の和訳版の情報は得られていないが、内容はタイトルの通りスーパーマーケットを舞台にした物語で、ロジック曰く”暗く笑える心理スリラー”な作品になっているようだ。いやぁ、ラッパーであるにもかかわらず小説にチャレンジしてしまうあたり、流石は知的なリリカルスキルを誇るロジックらしいなと思っていたら物語に合わせたサウンドトラック「Supermarket Soundtrack」を小説と同時に発表ときたから驚いた!映画ならいざ知らず、小説にサウンドトラックって・・・その発想力も凄まじいが、その中身を聴くと二度目の驚きが待っているではないか。ラッパーのロジックと言えばリリシストであると同時に、ひたすら韻を踏みまくるライマーとしての評価が非常に高いのだが、今作ではそのラップのスキルは控え目である。それどころか、サウンド的にはオルタナティブなポップ/ロックに傾倒しているくらいで、聴き手としては非常に戸惑ってしまった。これが本当にあのロジックのアルバムなのか?クレジット無しでは彼の曲だと気がつかないものばかりではないか!とは言え、その試み自体が面白い上に一曲一曲が粒揃いで、小説とどのようにリンクしているのか非常に興味深いアルバムである事は間違いない。更にはトライブ・コールド・クエストの名曲‘‘Can I Kick It’’のリリックを同名曲の‘‘Can I Kick It’’で引用していたり、6曲目に収録の‘‘Baby’’ではビズ・マーキーがこれまた名曲の‘‘Just Friend’’でサンプリングした事でも有名なフレディ・スコットの‘‘(You) Got What I Need’’のフックをオマージュしていたりと、控え目ながらもロジックのヒップホップIQの高さも楽しめる。また肝心の小説『Supermarket』は、米Amazonの文庫セールスで1位を獲得したとか。これに安易に天才なんて言葉は使いたくないところだが、このロジックの言葉を操る才能はやはり天才的と言わざるを得ないか?
(DJ-YU1)

PAGE TOP