今作を聴いて思う事は〈旬〉の一言。
それは一体何の話かと言えば、何を隠そうラッパーのリル・ヨッティの新作アルバム「Lil Boat 3」の事である。つい最近になってトレードマークである赤いドレッドヘアーを黒く染め直した彼のニューシットは、先程も述べたが〈旬〉のサウンドが目白押しな訳であり、その中でも日本人的な目線で外せないトピックスは”Tokyo Drift”を略した収録曲の”T.D”で間違い無いだろう。同曲は今のヒップホップ・シーンの気分にピッタリのハネたトラップっぷりもさることながら、エイサップ・ロッキーにタイラー・ザ・クリエイター、紅一点のティエラ・ワックといった実力派が揃って参加した豪華な一曲。まぁ”Tokyo Drift”と言いつつも聴いてみた感触としては東京感が全く無いのは御愛嬌として、US本国の若いヘッズを中心にバズっているのが容易に想像出来る破壊力を持つ曲に仕上がっている。その他にもフィーチャーをゲストに迎えた”Pardon Me”や、ドレイクとダベイビーが参加した”Oprah’s Bank Account”、ヤング・サグにリル・ダークと共演した”Till The Morning”等、時代を彩る勢いのあるゲストと共に旬なトラックがズラっと並ぶ充実ぶり。そして、この一癖も二癖もあるゲストを抑えて今作の主役を張るのは勿論リル・ヨッティで間違い無い。だが、ここのところのトラップ勢のリリースラッシュの中で他のアーティストとの差別化がしっかりと出来ているかどうかは疑問符がつかないか?いや、今作「Lil Boat 3」のプロダクションにケチのつけようが無いのは確かで素晴らしいアルバムな事に異論はないだが、2020年は皆様ご存じの通り怒涛のトラップのリリースラッシュであった訳だ。そりゃあもう、上半期からリルウジにドレイクだのリル・ベイビーやらポスト・マローンに加えてフィーチャーまでもが素晴らしいアルバムを連発しまくりで・・・うん。正直に言うと、ここまで似たタイプのアーティストやプロデューサーのクレジットが被るアルバムのリリースが続くと聴き手の消費が追いつかない様な気がしてならないのだ。現に今作「Lil Boat 3」はビルボード200にて初登場14位に留まった訳だが、リリースの時期を少しズラすだけでヘッズ達のリアクションも変わっていたのでは?当然これだけ豊作なのはトラップの黄金期である証拠でもあるのだが、市場で流行っている代償としてパイの取り合いも壮絶なものになっていたりして。だとしたら、この群雄割拠のシーンの中で誰がビギーや2パック級のレジェンドになるか高みの見物といきましょうか?
DJ YU-1
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