Release Date / Feb. 14 2016
今現在のHIP HOPシーンの勢力図を凝縮したかの様な豪華なゲスト陣やプロデューサー達を迎え、3度に渡るアルバムタイトルの変更等の小さなトラブルも乗り越えて、遂に発表されたカニエ・ウエストのニューアルバム「The Life Of Pablo」。前作「Yeezus」の発表からおよそ3年振りの新作だ。もちろん多くのファンが待ち望んでいたアルバムであり、詳しくは後述するが楽曲自体も素晴らしい。そんなニューアルバムの発表から1ヶ月近く経過する現在でも何故かビルボードチャートにはカニエの名前は見当たらず・・・実はこれはセールスが思わしくないといったネガティヴな情報では無い。2016年はHIP HOPにとって新たなビジネスモデル確立の大きな年になるかも知れないし、そのターニングポイントとして今作「The Life Of Pablo」が重要な役割を果たすかもしれない。
というのも今作はダウンロードサイトのTIDALからでないと公式の音源を手に入れる事が出来ず、更にTIDAL経由のダウンロード数はチャートに反映されない仕組みになっているのだ。先日のリアーナのレビューでも触れたTIDALであるが、実はあのJAY-Zが仕掛ける新たなビジネスである。当然の如くアップル社のiTunesに比べたら加入者は少ないが、サイト自体の日が浅いのだから仕方が無い。しかしカニエ本人がアップル経由では自分のアルバムは流通させない事、CDでのリリースも予定が無い事を公言すると、TIDALの加入者が急増。これをビルボードのチャートに照らし合わせると一体何位になるかは定かでは無いが、これまでの音楽の流通の在り方に明らかに風穴を開けにかかっている事は想像に難くない。リアーナの「ANTI」の誤ダウンロード問題もTIDALに目線を向ける為の炎上商法にすら思えるが、流石にそれは勘繰り過ぎか?しかしながら、カニエ・ウエストの「The Life Of Pablo」はわざわざTIDALに加入してでも聴きたくなるアルバムである事は事実である。チャンス・ザ・ラッパー、タイ・ダラー・サイン、ケンドリック・ラマー等、旬という旬のアーティストが贅沢に参加したアルバムは売り出し方は変化球でも、内容はド直球で勝負。今後の動向は分からないが、TIDALでのダウンロード数をビルボードに組み入れさせるだけの勢いを感じるくらいだ。尚、CDでは出さないと言っておきながらアナログ2LPでは発売するあたりにカニエ本人のHIP HOPアーティストとしての意地を見た。個人的にもアナログでも是非手に入れたい。
(DJ YU-1)
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