Kanye West / Donda

Release Date / 29 Aug. 2021
キリスト教信仰をリミッター限界まで振り切った事により、ゴスペル・アルバムと化した前作『Jesus is King』の発表から2年が経過・・・いや、実は昨年には収録曲の殆どが仕上がっていたらしいのだが、3度の発売延期を経て遂に発表されたのが今作『Donda』だ。この、2007年に他界した Kanye の最愛の母の名を冠した最新作は全27曲、また参加したゲスト・アーティストは30組を超える超重量級なアルバムとなっている。もう、何処から切りとって良いか迷うくらいの長編小説の様な作品となっているのだが、敢えてキャッチーなトピックスから挙げるとすれば、しばらく不仲説が囁かれていた Kanye West と JAY-Z がアルバム冒頭の “Jail” で久々の共演を果たした事ではないか?この2人の共演は正に長編小説の幕開けに相応しいコラボレーションと言えるだろう。そして、ここから先は膨大な情報量を蓄えた今作『Donda』なので、既に様々な角度から考察されているのだが、せっかくなので筆者なりの見解も述べさせて貰いたい。

まず、個人的に気になった点は、 “24” ではNBAの元スーパースターである故・Kobe Bryant、 “OK OK” では故・Juice Wrldを追悼するリリックを書き、 “Tell The Vision” では故・Pop Smokeをフィーチャーしている所だ。これは、アルバムタイトルに亡き母の名を冠している事からも分かる通り信仰深い Kanye らしい故人へ向けたメッセージ性の込め方だと関心させられた。また、これだけの曲数をカースワード抜きでラップしてしまう所なんて自身が相変わらず頑固なMCである事を聴き手に再認識させるには充分な仕事ぶりと言えるだろう(時としてカースワードを使わないスタイルはストリートのヘッズから批判される要因にもなるのだが・・・)。そして、サウンド面でも全編に渡り Kanye West が指揮を取っているのだが、ゴスペルに振り切り過ぎた前作『Jesus is King』と比べると今作ではヒップホップに舵を切り直した様にも見受けられる。中でも Lauryn Hill のクラシック “Doo Wop” をサンプリングした”Believe What I Say” なんかは、初期の Kanyeファンなら感涙モノのネタ使いだ。これには前作のゴスペルっぷりに違和感を覚えたヘッズにドンピシャで刺さったのだろうか?今作『Donda』は、セールス面でも記録づくめなのだ。そう、Kanye自身10作目の米・アルバムチャートで1位を獲得した今作は、なんとiTunesチャートでは世界152カ国で1位を獲得!もう、世界中のSNSで『Donda』祭りといって良い盛り上がりを見せているのだが、一つ小言を言わせてもらうとすれば、このアルバムは娯楽作品として楽しむには少し “ヘヴィ” 過ぎませんか?筆者は2周目で胸ヤケを起こしそうになりました(笑)
DJ YU-1

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