Release Date / 28 May 2021
悲しい事に2021年は、日米のヒップホップ・シーンにとって訃報が相継ぐ一年となりつつある。まず年明け早々にマスク姿でお馴染みのラッパー MF Doomの訃報が飛び込んでくると、日本ではSCARSのSTICKY、シャカゾンビのオースミと矢継ぎ早に寂しいニュースが入ってきた事は記憶に新しい。また、いずれのMCも唯一無二の個性を携えた素晴らしいアーティストであるだけにシーンに対する損失も計り知れないものがある。そんな中、2000年代のニューヨークを代表するラッパーにも訃報が、、、日本でもかなりの数の報道が流れたのでご存知の方も多いと思われるが、言わずと知れたビッグネーム= DMXまでもが逝ってしまったのだ。しかしながら、かねてから薬物依存に苦しんでいることを公表してきたDMXの死因がオーバードーズである事には驚きは無い。だが、やはり時期が最悪だったと思うし、彼の全開でシャウトするマシンガンの様なラップが聴けないのは、ただただ辛いではないか。いや、本当に2021年の上半期のシーンは暗いニュースばかりで嫌気がさしてしまうのだが、ここにきてDMX及び彼の盟友であるSwizz Beatsから最高のギフトが届けられたので、気を取り直して紹介したいと思う。
もうお分かりかとは思うが、そのギフトとはDMXの遺作である今作『Exodus』だ。これは、あまりにも狙いすましたタイミングでのリリースなので下品な商売っ気を感じてしまうヘッズもいるかも知れないが、実は今作はDMXが生前より発表に向けて準備していた音源である事は彼の遺族がリークしている。ただ、DMXが今も健在だったなら今作『Exodus』の内容が若干変わっていた事も事実。そして、それは今作にて全曲プロデュースしたSwizz Beatsの粋な計らいでもあるのだ。そう、生前より自身の作品には所属するクルーのRuff Rydersのメンバーくらいしかゲストを迎え入れないDMXなのだが、今回ばかりはとプロデューサーであるSwizz自ら豪華なゲストを呼んでみせたのだ。しかも彼の全盛期だった2000年代初頭には実現しなかった夢の様なコラボばかりで、クレジットを見るだけでもワクワクしてしまった(笑)例えば、あの当時はビーフのあったJAY-ZとNasというNYの2大MCを迎えいれた”Bath Salts”、意外にも相性が良かったAlicia Keysとの”Hold Me Down”、なんとU2のBonoまで参加した”Skyscrapers”で度肝を抜かれたかと思えば、西からはSnoop Doggに南部からはLil Wayneとオールスターさながらのラインナップには誰しもが圧倒されるだろう。まぁ、正直に言うとSwizz Beatsのトラックとの相性に疑問符の付くゲストもいたし、DMXのラップもデビュー当時の破壊力と比べると少し物足りなく聴こえる曲もあるのだが、そこを指摘するのは野暮ってものだろう。ここは彼の偉大なる功績を称えて今作の味を噛み締めたいと思う。R.I.P.。
DJ YU-1