Release Date / 17 May 2019
現在、音楽シーンで最もセールスを伸ばしているジャンルはヒップホップで間違いないなく、そのヒップホップの特に旬で旨味のあるところを料理させたらDJ キャレドの右に出るものはいないだろう。まさに2017年に発表した前作「Grateful」がそんな感じのアルバムで、ヒップホップ・オールスターと呼べる面子が一堂に介すゴージャスさがあった。もちろん「Grateful」はセールスも文句なしで、全世界のうち26ヶ国のチャートで1位を獲得するくらい売れに売れたものだ。あの前作の凄まじいヒットから2年が経ち、更に世界中でヒップホップ熱が高まったところでDJ キャレドは通算11枚目となるスタジオアルバム「Father of Asahd」を発表した訳だが、今作もまたヒップホップの旬の旨味をこれでもかと詰め込んでいる。そのパーティ感たるや今作に参加したゲストを羅列するだけでも胸焼けしそうなくらいに濃厚だ。ジェイ-Z、ビヨンセ、ナズにリック・ロスといったベテラン組から、21サヴェージ、カーディ・B、クリス・ブラウン、リル・ウェインからジャスティン・ビーバーといったスターまで怒涛のラインナップが続く。よくもまぁ、これだけのアーティストを1枚のアルバムに再び呼べたと関心するくらい。無論このキャレドの求心力は流石の一言なのだが、参加したゲストやアルバムの構成が前作「Grateful」と被り過ぎな気もしたりして・・・。とは言えこれだけのお祭り騒ぎなアルバムに細かい注文をつけるのも野暮ってものか?きっと夏フェスや紅白歌合戦でも見るくらいの気持ちで無心で楽しむのが正解なのだろう。そして肝心のセールスの方は今作「Father of Asahd」はアルバムチャートで初登場2位。惜しくもタイラー・ザ・クリエイターの「IGOR」に僅か3万枚の差で1位を譲ってしまったのだが、これが物議を醸している。なんでも「Father of Asahd」の売り上げはエナジードリンクのバッテリーとセット販売した10万枚がカウントされてなかったとか。これがカウントされていれば今作がチャート1位を獲得していたとしてキャレドはビルボードを訴訟する動きまでみせているのだから穏やかではない。だが、本来ビルボードはノベルティ付きのCDはチャートにカウントしない方針だったような気がするが。そうでもしないと何処かの国みたいに握手券付きのアイドルCDがチャートを侵食してしまうもので(笑)まぁ冗談はさておき、訴訟なんてしなくても「Father of Asahd」は現在のヒップホップの勢いを体感する上で最良のアルバムだと言えるのでは?
(DJ YU-1)