Demi Lovato / Dancing With The Devil  

Release Date / 2 April 2021

日本のライト層のリスナーにとって、Demi Lovatoというシンガーのパブリックイメージは未だにディズニー映画『アナと雪の女王』のUS盤の主題歌の歌い手という印象が強いのだろうか?否、Instagramのフォロワーにて脅威の1億人を誇るスーパースターの彼女に対して何時までも過去のイメージを引きずるのは、なんとも失礼な話だ。と、、、前置きはこの辺にしておくとして、2021年のDemi Lovatoがちょっと凄い事になっているではないか。

まず話を遡ると2017年に前作『Tell Me You Love Me』を発表したDemi Lovatoだが、その一年後に、事もあろうか薬物の過剰摂取により生死をさまよう事態を招いてしまう。そこで明らかになったのはDemiが重度のヘロイン中毒者である事と、彼女が10代だった頃にも同じ過ちを犯していた事だ。この世界的シンガーに突如として降って湧いた薬物スキャンダルは非常にショッキングな内容だったが、彼女にとっての最大の問題は一命を取り留めた後のリハビリ期間だった。そう、薬物依存に加えてメンタルヘルスまで抱えていたDemi Lovatoが、再び表舞台に立つ為に一体どれだけの困難を乗り越えたのかは想像を絶する。そして、この想像を絶する自身の闘病生活のドキュメンタリーが先月からYouTube上で公開されているのだが、このドキュメンタリーのサウンドトラックとも言えるアルバムが今作『Dancing With The Devil』である。

奇しくもドキュメント映像と同名のタイトルを冠した今作は、とにかく重い。そりゃそうだ。人間の生と死とドラッグをテーマに扱う作品がポップに仕上がる訳が無い。まず、昨年の第62回グラミー賞にて復帰後初のパフォーマンスを披露した“Anyone”を始め、闘病生活を支えてくれた妹に捧げた“I.C.U”、アルバムタイトル曲である“Dancing With The Devil” は勿論のこと、更にはポップアイコンであるAriana Grandeをゲストに迎えた“Met Him Last Night”に至るまで重ための楽曲となっているくらいだ。しかしながら、ただの重いテーマのアルバムに終わらないところがDemi Lovatoのスターたる所以か?もしくは常に薬物依存問題を抱えながら成長してきたアメリカのエンターテイメント業界だからこそ為せる技なのか、この『Dancing With The Devil』は重い内容を扱いながらも極めて洗練されたバラードにも聴こえてくるのだ。これは筆者の個人的な感想と言う訳ではなく、ドキュメンタリー映像での3000万回再生や、ビルボード200でのリアクションの良さからも顕著に現れていると見ている。当然ながら彼女の犯した過ちを肯定する気はないし、その存在をドラッグアイコンとして美化するつもりも毛頭ないが、薬物依存を隠す事もなく作品に昇華するアーティストとしての貪欲な姿勢は賞賛に値する。これは傑作だ。

 

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