Release Date / Mar. 9 2018
個人的には、彼の事は息の長いシンガーだと認識しているし、一定のペースを保ちながらアルバムを落とし続ける姿勢にも好感を持っていた。野球選手で例えるなら華やかなホームランバッターではないが、走攻守3拍子揃ったバランスの良い好プレイヤーといったところか?ただ何でもソツなく出来るが故にイマイチ目立たないというか、器用貧乏なイメージもつきまとう。いや、でも改めて聴くと甘い歌声はやっぱ良いわ。という訳でボーイズグループのミスタ時代を含めるとデビューから20年余りのキャリアを誇るR&Bシンガー = ボビー・Vが前作「Hollywood Hearts」から約1年半ぶりとなるスタジオアルバム「Electrik」をリリースした。今作はこれまでのボビー・Vとは一味違っていて・・・いや、違うというより初心に戻った原点回帰と評した方が正しいか。そう、ボビーがソロデビューと同時に‘‘Slow Down’’の大ヒットによりブレイクを果たしたのが2005年の事だが、彼の当時のプロデューサーがTLCやボーイズ・II・メン等の楽曲も手掛けていたティム&ボムだ。そのティム&ボムのティム・ケリーとボビー・Vがソロデビュー当時の音を再現するべく作り上げたアルバムが、この「Electrik」なのだ。まず今作からの先行シングルの‘‘Lil’ Bit’’ではゲストにスヌープ・ドッグを迎えているのだが、ゲストのラップ以上に耳に残るのがビートの構成だ。ビートパターンだけ聴けば自身最大のヒットである‘‘Slow Down’’にそっくりではないか。これはボビー本人曰く、当時のサウンドを再現しつつも現代のサウンドへのアップデートした試みだそうで。確かに‘‘Lil’ Bit’’以外の曲も今っぽい音でありながらもボビーのデビュー当時のフレイヴァも残っているかのようだ。そもそも今作自体がティム・ケリーがA&Rを努める新たなレーベル・Sono Recordingsの第一弾となるアルバムである。レーベルの今後を占うであろう作品は聴けば納得の充実ぶり。冒頭でも例えたが、ボビー・Vが今作でド派手なホームランを放つかは分からない。ただ走攻守バランス良く整った好アルバムはR&Bとしてのレベルはすこぶる高い事は間違いない。
(DJ YU-1)
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