Release Date / 11 Aug. 2023

8月11日。この日付けが米国上院議会にて〈ヒップホップ記念日〉に制定されたのが2021年の事である。そう、これまでにもヒップホップの起源には様々な諸説があったのだが、このカルチャーのパイオニアの1人とされるDJ Kool Herc が初めてブロック・パーティを開催したとされる日付けの8月11日が、晴れて〈ヒップホップ記念日〉と認定された訳だ。いやはや、一国を司る議会でヒップホップに関する議題が挙がるとは流石のエンタメ大国 = アメリカである。そして、去る2023年8月11日はヒップホップというカルチャーにとって特別な1日となった。勘の良いヘッズなら既にお気付きかと思うが今年の8月11日は “ヒップホップ生誕50周年” の記念日として盛大なパーティがNY・ヤンキースタジアムで開かれたのだ。シーンを彩ってきた幾多のレジェンド達によるトータル8時間超えのショータイムは圧巻のボリュームだったのだが、時を同じくしてヒップホップの名門レーベルのTommy Boy が同カルチャーを祝うべく 50周年記念のコンピレーション・アルバムを発表したので紹介したいと思う。

なんでもヒップホップ50周年にちなんで『And You Don’t Stop A Celebration of 50 Years of HIP HOP』と銘打たれたアルバムは、その内容もTommy Boyの歴史を代表してきたタイトルが50曲収録！正に50年尽くしの力技を敢行して違和感が無いレーベルはTommy Boy か Def Jam くらいのものだろう。いや、しかしながら同コンピレーションのトラックリストのセレクトには非常に頭を悩ませたのでは無いだろうか？もうね、、、名曲が多すぎて50曲じゃ足りなかったんじゃないかな(笑)そんな中でも敢えて外せない曲をピックアップするなら、まずは Aflika Bambaataa の “Planet Rock” が挙がるだろう。先述のKool Herc と共にヒップホップ3大DJの1人に数えらるレジェンドの “Planet Rock” は文字通りヒップホップの歴史を変えた1曲。そんな同曲はワンループ・トラックの観点からみても史上最も有名なワンループの1つと言い切ってしまっても問題ないのでは？また、80年代のミドルスクール期を代表するDe La Soul の “Plug Tunin’ ” 、ヒップホップ黄金期と評される90年代からは Naughy by Nature の “HIPHOP HOORAY” , 故・Coolioの “Gangsta’s Paradise” など、どの世代のトラックを切り取っても豪華なラインナップが出てくるあたりは流石の名門Tommy Boyだ。(余談だがミドルスクールという言い回しは日本のヘッズくらいしか使わないらしい)更にはヒップホップ史の中でも群を抜いて熾烈を極めたビーフ = 東西戦争において、ドス黒く輝いた C.N.Nの “LA, LA” が収録されているあたりが個人的にツボだったりもする。(一般的に 2Pac とビギーの目線で語られがちな東西戦争だが、このビーフの陰のMVPは C.N.N と Mobb Deep を始めとしたクィーンズ勢だと思っているくらいだ)

この様に名曲がズラリと並ぶ『And You Don’t Stop A Celebration of 50 Years of HIP HOP』だが、当然ながら収録曲は全て Tommy Boy から発表された音源だ。なので、この1枚でヒップホップの50年の歴史の全てを網羅できるかと言えば答えはNOだ。しかしながら、たった1つのレーベルがこれだけのトラックリストをまとめ上げた功績の大きさは計り知れないものがあり、これからヒップホップに入り始める若きヘッズにとって、今コンピレーションが最高の教科書になる事は間違いないとか言っとく。
DJ YU-1