Release Date / 7 Feb. 2022
今現在の若いヒップホップ・ヘッズの中に Kid Capri というDJの存在を知っている者が一体どれだけいるのだろうか?なんせ、自身名義のリードアルバムのリリースは約24年ぶりとなる。そう、前作『Soundtrack To The Street』は非常に素晴らしいアルバムだったが、1998年に発表された代物なのだ。と言う事は、ヒップホップ = トラップミュージックがメインストリームとなった現代のヘッズ達の殆どが産まれてすらいなかった頃の作品と言う事になる。だが、ニューヨークのシーンではレジェンドDJと呼んで差し支えないキャリアを誇り、数々のビッグ・パーティをロックしてきた最重要人物の1人が Kid Capri だ。そんな彼が24年ぶりにリリースした渾身の作品は、聴き手側もヒップホップと言うカルチャーに最大限の敬意を払って臨まなければなるまい。
少し前置きが長くなってしまったが、Kid Capri が久しぶりにドロップした今作『The Love』は前作『Soundtrack To The Street』のビートを踏襲した Boonbap なサウンドのアルバムとなっている。ただ、Track Masters 主導で制作されたビートがメインだった前作と違い、今作『The Love』のビートのプロデューサーには全て Kid Capri 自身の名がクレジットされている。これには筆者も驚いた。確かにパーティDJとしては一線級の Kid Capri だが、彼にはトラックメイカーとしてのイメージが無かったからだ。だが、ヒップホップ聡明期からニューヨークのシーンを見守り、DJ Premier や Pete Rock といった歴戦のトラックメイカーからもリスペクトされるDJ が作りあげるビートが軽く聴こえる訳が無い。手堅いスネアが壮大な上ネタに絡みつく “Truth Will Never Lie” から幕を開ける今作は、まるで聴いた者を90年代のニューヨークに導いてくれるかの様な響き方を魅せるのだ。中でもタイトなワンループの中毒性が病みつきになる “Sucka Free” , “Slap Key” , “This Is How We Get Around” , “Handsome Woman” あたりの収録曲はAKAIが誇るサンプラーの名機 = MPC 2000がレコーディングの主役だった頃のヒップホップの記憶を鮮明に思い出させてくれた。と、ここまではベタ褒めのレビューになってしまったが、1つネガティブな事を言わせてもらうと Kid Capri の前作から24年というブランクは流石に長すぎやしないか?と言う事だ。特にメインストリームの音楽をリアルタイムで追っている若者に今作を “新譜のヒップホップ” として認識させるのは少々無理があると感じた。(個人的には好きなタイプのアルバムなんですけどねぇ。。。)
DJ YU-1