Robert Glasper / Black Radio Ⅲ

今作を一言で表すならば「上質な黒い音楽」といったところか?もうね、この人はセンスの塊なんです。そんな超一流のジャズピアニストである Robert Glasper が2012年に発表した『Black Radio』は、作品のタイトルそのままにジャズというジャンルの垣根を飛び越え、全てのブラックミュージックを包み込む様な完璧なアルバムだったと記憶している。特に彼の奏でるピアノの旋律と HIP HOP / R&B との相性は抜群で、翌年の2013年グラミー賞にて〈ベストR&Bアルバム賞〉を受賞した程だ。そして、その完璧だったスタジオアルバム『Black Radio』の衝撃から10年が経過した2022年。Robert Glasper は、満を持してシリーズ3作目となる『Black Radio Ⅲ』を発表した訳だが、今作でも先述の通り「上質な黒い音楽」を随所で楽しませてもらった。

まず、ゲストで参加したアーティストの人選からして解ってらっしゃいます。Musiq Soulchild に Q-TIP、Killer Mike、Common といったベテランから、D Smoke、Yebba といった若手に至るまでツボを突いたセレクトで作品を彩ったかと思えば、相手がラッパーであろうとシンガーであろうとも美しいピアノの旋律で包み込んでいくスタイルはシリーズ1作目から何ら変わっていない。いや、むしろコロナ禍の為にリモートでのレコーディングを余儀なくされたにも関わらず、これだけのスムースなコラボレーションを聴かせてくる凄みに戦慄を覚えたくらいだ。(Robert 本人は今作を語るインタビューにてリモートでのレコーディングの難しさに言及していたが、そのインタビューでの発言がなければスタジオでセッションした音源にしか聴こえなかったかもしれない)
そして最後に、、、この素晴らしいアルバムは文字通り捨て曲ナシで作品の何処を切り取ってもハイライトなのだが、敢えてこの中からベストな1曲を挙げるとするなら個人的には “Black Superhero” を推したい。イントロから始まるビートに合わせたピアノの美しさもさることながら、ゲットーで暮らす黒人達に光を当てた BLMライクなリリックにブラックミュージックの未来を見た。これは間違いなくシーンにとってのクラシックとなるだろう。
DJ YU-1

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