Keedron Bryant / I Just Wanna Live

Relaease Date / 11 Sep. 2020
2020年、アメリカ社会においてコロナ禍に続く最大のトピックと言える社会問題は間違いなくBlack Lives Matter運動(以下BLM)だ。所謂、白人警官による黒人のジョージ・フロイド氏の殺害事件は全米のみならず世界各地で連日報道される事となる。例えば日本でいえばテニスプレイヤーの大阪なおみ氏による全米オープンでのブラックマスクによる抗議が記憶に新しいところか?そして当然の如く本国アメリカでの抗議活動は熾烈を極めた。また多くの黒人アーティストが活躍する国らしく、様々なBLMソングが発表されているところも2020年のアメリカを象徴する出来事だと言えるだろう。有名どころで言えばラッパーのNasによる”Ultra Black”、ヒットチャート的にはDaBabyの”Rockstar(BLM Remix)”も多いにバズった。そんな中、社会的に最もショッキングだったBLMソングはKeedron Bryant(キードロン・ブライアント)の”I Just Wanna Live”ではないか?それもその筈、ゴスペルシンガーであるKeedronは若干12歳と言う若さなのだ。肝心の楽曲自体は彼の母親であるJohnetta Bryantが書き下ろしたものだが、僅か12歳の少年に「I Just Wanna Live / ただ、私は行きたいだけ」と言うリリックを書かせた衝撃は計り知れないものがあり、文字通り社会現象を起こした。その影響力は凄まじく、この”I Just Wanna Live”の動画は公開されるや否や瞬く間に200万再生を突破。更にはDJ PremierやDr. Dre、Kety Perryといったアーティストだけでなく、オバマ元大統領までもがSNSで彼のリリックに言及する事態にまで発展してしまったのだ。するとDr. Dreが主催を務めるアフターマスのDem Jointzが”I Just Wanna Live”のRemixバージョンを公開し、これを機に”I Just Wanna Live”はRemixを含めた8曲入りEPとしてワーナーからリリースされる事となった。この今作の最大のセールスポイントは何と言ってもKeedronの12歳とは思えない歌声だろう。その驚くほど大人びていてハスキーな歌声はタイトル曲の”I Just Wanna Live”だけでなく、”Talk About It”や”U Got This”、”Kings & Queens”といった他の楽曲でも遺憾なく発揮されている。そう、今作で語られるべくは彼の年齢に似つかわしくないパフォーマンスであるべきなのに、どうもBLM運動による話題が先行しがちな点に違和感を覚えてしまった。今年の社会情勢を鑑みると仕方がないとも思えるのだが・・・いずれにせよ、Keedron Bryantという若きシンガーの将来が楽しみな事に間違いは無い。
DJ YU-1

PAGE TOP