10代または20代の若者達に与える影響力とカリスマ性。そしてドラッグアイコンとしての立ち振る舞いは、まるで『Up in Smoke tour』で全米を駆け回っていた頃の Dr. Dre と Snoop Doggを彷彿とさせる。否、彼等は何でもかんでもUSのシーンを追随している訳ではなく、しっかりと日本のヒップホップシーンにアップデートした形でのドラッグアイコンを演じている(または実践している)と言い切って良いだろう。そうなのだ。ここ数年間のHIP HOPシーンにおいてセンセーショナルな話題を振り撒いてきた舐達麻の勢いが止まらないのだ。そんな彼等が2019年に発表した2ndアルバム『GODBREATH BUDDHACESS』は、極めてイリーガルなトピックを扱う問題作にも関わらずフィジカルリリースした分は即完売。それどころか、同アルバムのアナログレコードは定価の数十倍ものプレミア価格で取引されるという熱狂ぶりに加え、全国誌『Ollie』のカバーまで飾ってしまったくらいだ。(この表紙の起用はちょっとした事件だったと思う)
と、ものの見事に音楽業界のメインストリームに片足を突っ込んできた舐達麻だが、この法治国家の日本においてウィードをリリックの題材にしたアーティストが、これ程までに脚光を浴びた事例があったのだろうか?無論ここまで目立ってしまうと警察も黙っているはずはなく、舐達麻はメンバーの逮捕などのトラブルに見舞われてしまうのだが、それに挫ける様子もなく作品のリリースを続けてきた。そう、2019年の『GODBREATH BUDDHACESS』以降も “BUDS MONTAGE” , “BLUE IN BEATS” と秀逸なシングルをたて続けに発表し、3rdアルバムも視野に入ってきた2023年。満を持して発表したニューシングルが今作 “ALLDAY” という訳だ。そして、また今作も儚くて美しい楽曲に仕上がっているではないか。この世界感は舐達麻のビートを手がけてきた盟友Green Assassin Dollarの手腕に寄る所も大きいのだが、そもそもグループ自体のヒップホップIQが非常に高いという事実からも目を逸らしてはならない。中でもクルーのリーダー格である BADSAIKUSH は、以前に NUJABES のサウンドに傾倒している趣旨の発言をしているが、彼等の楽曲を聴けばサンプリングミュージックの観点から見ても屈指の完成度を誇るグループである事が分かるだろう。(現に今作でもChanging Faces の名曲 “All Days, All Night” のフレーズを巧みにループしている)
そして最後にここまでベタ褒めしておいてアレなのだが、本稿で彼等のリリックの内容を肯定も否定もするつもりはない。(残念ながら舐達麻のリリックをエンターテイメントとして昇華出来るかどうかは、これからの日本の音楽業界の懐の深さに委ねざるを得ないので)だが、これほどまでに魅力的な曲を作る才能があるグループなのだから、全国のヘッズからプロップスを集める事は当然だと思えるし、筆者としても舐達麻の事は今後とも応援していくとか言っとく。
DJ YU-1