Meek Mill / Championships

Release Date / 30 Nov. 2018
なんだか最近ではヒップホップの社会的地位がすっかりと向上して、まるでポップスターかの様な立ち振る舞いをするラッパーが増えてきた気がする。勿論これは良い意味での話で、音楽的にアンダーグラウンドな場所から脱却を図ること = 貧困から抜け出すことを意味する訳で、誰しもが成功を夢見ることに異論は無い。ただラッパーであるにも関わらず、あまりにも真っ当なアーティストし過ぎるのも少し寂しいような?個人的には成功したMC達を支持すると同時に、あのギラギラしていた時代のアウトローなMCの刺激もまた懐かしくもあるのだ。と、ここで久しぶりにガッツリと政治的な問題を抱えた男がアルバムをドロップしてきたので紹介したい。そう、あのリック・ロスが創設したレーベルであるMaybach Music Groupのエース格 = ミーク・ミルが新たにリリースした「Championships」が何やら各方面で物議を呼びそうなのだ。まぁ事の発端は自業自得と言うか自分自身にあるのだが、麻薬取引や銃所持といった前科の積み重ねから保護観察処分を受けていたミーク・ミル。更に昨年の11月には度重なる保護観察違反により、2年から最大4年に渡る懲役を言い渡されて遂に収監されてしまう。ここまでなら古き良きアウトローなMCのスキャンダルに聞こえるのだが、全米ではこれが社会問題にまで発展してしまう。なんでもミーク・ミルを担当していた保護観察官が音楽的には素人であるにも関わらず、トラックに引用するネタの事からリリックの内容までもをプロのアーティストであるミルに指図していたらしく・・・当然、これを突っぱねると担当官から私怨丸出しの懲役を喰らったという訳だ(笑)およそ日本人からは想像もつかない話だが、流石にアメリカでもミルに同情する声が多く、ヒップホップシーンからはJAY-Zや、ミルとは長きに渡りビーフを抱えていたドレイクまでが擁護に回ると、なんとペンシルバニア州知事までもが彼の釈放を要請。すると一度言い渡された懲役を覆し約半年で釈放されてしまったではないか!まるでスリリングなドラマの様な展開だが、本当にスリリングなのは釈放後にドロップされたアルバム「Championships」で間違い無いだろう。釈放に向けて援護射撃してくれたJAY-Zをフィーチャーした‘‘What’s Free’’、ビーフを解消したドレイクとの和解作‘‘Going Bad’’はいずれもシリアスなトラックに正攻法のフロウが映え、またタイトル曲である‘‘Championship’’や、‘‘Uptown Vibes’’はワンループ物の上ネタが耳から離れないタイトな出来だ。いずれの曲もチャラチャラした上辺のラッパーでは太刀打ち出来ないであろう硬派な楽曲達ばかりだ。またカーディ・Bやフューチャー、コダック・ブラック、エラ・メイといった多彩なゲストとのコンビネーションもバッチリ。これだけでも「Championships」が熱量の高いアルバムである事が伺えるが、まだまだ話題はこれだけではない。なんとこのミーク・ミルの収監から釈放までのゴタゴタをドキュメンタリー映像としてAmazon Primeで製作するというニュースまで発表されたとか。まるで2パックやシュグ・ナイトが危険な空気を作り出していた時代を見るような展開だ。これを機にAmazon Primeにも手を出して見ようかな(笑)
(DJ YU-1)

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