Release Date / 7 September 2018
デビュー当時は〈UKのローリン・ヒル〉と呼ばれるほどのシンガーだったエステルだが、改めて聴いてみるとデビュー最初期はラッパーとしての一面が強かったりして、確かにローリン要素が濃い目のシンガーだったと気付かされる。という訳で、エステルと言えば何といっても2008年に大ヒットしたスタジオ・アルバム「Shine」のイメージが浮かぶのではないか?当時「Shine」は、あのジョン・レジェンドの全面バックアップで制作されたという点もさることながら、シンガーとしてもラッパーとしてもビートを乗りこなす彼女の縦横無尽さから、まさにフージーズ初期の頃のローリン・ヒルと同じようなフレイヴァを感じたと記憶している。その後のエステルの活動を振り返ってみても、どこかヒップホップ・ソウルと言うか現代的なR&Bシンガーの第一人者という印象が耳に残るくらいなので、そんな彼女がニューヨークを拠点とするレゲエの最大手レーベルであるVPに移籍したというニュースは、個人的には少しショッキングな出来事だった。しかも自身にとってVP移籍後初となるアルバムのタイトルが「Lovers Rock」って・・・これじゃあエステルの事を初見の人が聴いたら、彼女の事をレゲエがルーツのアーティストだと勘違いしちゃうよ(笑)
なーんて言いつつも実際に今作を聴いてみるとラヴァーズ成分を交えつつも、力強いソウルフルなR&Bが楽しめるのでご安心を。そもそもエステルは、以前にもショーン・ポールとの‘‘Come Over’’や、ジプシャンとの‘‘Majestic Love’’での客演でレゲエシーンからも評価されていたくらいなので今回のVP移籍も自然な流れだったのかも知れない。そして今作の鍵を握るのはエステルとは先述の‘‘Come Over’’以来のプロデュースとなるスーパー・ダップスだ。実は‘‘Come Over’’はVPのコンピレーションの「Reggae Gold 2009」に収録されていたりと、今作「Lovers Rock」の伏線となっているところが面白いし、実績のある組み合わせ〈スーパー・ダップス × エステル〉だからこそ、ラヴァーズとR&Bの配分が絶妙なバランスのアルバムになったのかもしれない。そう、今作の様にアーティストの出身地や細かなジャンル分け等で区別できない作品に出会うと音楽って本当に楽しい娯楽なんだと思う。だってセネガル産まれでUKの育ちのエステルが、ニューヨークを拠点とするレゲエ・レーベルのVPからR&Bをドロップだぜ?もう意味わからないだろ?(笑)さて、能書きはこの辺にしといて、珠玉の歌声を楽しもうじゃないか!
(DJ YU-1)
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