Release Date / 31 Aug. 2018
さて、この斬れ味の鋭い刃物のようなアルバムを一体どの角度から批評すれば良いものか?もう、たった一枚のアルバムに色々な要素がてんこ盛りで・・・これはライター泣かせというか、活字で紐解くことを躊躇するというか(笑)という訳で相変わらずの問題児ぶりでシーンを掻き回すエミネムの新作「KAMIKAZE」がヤバいことになっている。まず、今作のどの辺がヤバいかというとセールス面での記録だろうか?今更だがエミネムと言えば数々のヒットで知られるMCだが、彼は今回も御多分に漏れず「KAMIKAZE」でも全米アルバム・チャート初登場1位を獲得。これで2000年の「The Marshall Mathers LP」でのデビューから9作連続でアルバム・チャート1位を獲得したことになるが、これはとんでもない記録ではないか?モンスターのようなアーティストがひしめくエンタメ大国アメリカのチャートにおいて2位以下のアルバムを一度たりともリリースして無いとは・・・しかも白人のラッパーがだ。もちろんこんな化け物じみた記録はエミネムだけの勲章で、前作「Revival」での8作連続1位が新記録だったくらいだ。もはや他のアーティストに背中を見せないくらいの独走状態と言えよう。もし、これに追いつく可能性があるとしたらドレイクくらいか?そんなドレイクですら今作のタイトル曲‘‘Kamikaze’’では痛烈にディスられる始末なわけで。そう、今作の本当のヤバさはセールス面では無く、リリックの内容が大問題なのだ。もう収録曲の大半がディスソング!特にエミネムは最近流行のマンブルラッパー(リリックの発音をわざとルーズにして聴き取り辛くするスタイルのMC)には御立腹のようで(笑)まず‘‘The Ringer’’ではリル・ヨッティとそのフォロワーMC達を、‘‘Not Alike’’では今売れに売れているミーゴズを標的にマンブルラッパーのスキルを痛烈にディス!他の曲達でもベテランのジャ・ルールに加えて先述のドレイク、またはタイラー・ザ・クリエイターとマンブル以外のアーティストにまでディスの毒牙が及ぶが、今作のもう一つのヤバさは、このエミネムの圧倒的なスキルだ。例えば‘‘The Ringer’’や‘‘Lucky You’’で見せたマシンガンのようなライムなんかはマンブルラッパーがマネしようものなら舌を噛んでしまうのでは?(笑)まぁ、マンブルスタイルを意識して過剰に早口なライムにした可能性もあるが、ここまで言葉を詰め込まれてしまっては素直にエミネムを上手いと認めざるを得ない。まぁ、伊達に自らをラップ・ゴッドとは呼んでいないということか。仮にリリックの内容が分からなかったとしても必聴の価値あるアルバムに仕上げるあたりは確かに神がかっている。
(DJ YU-1)
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