Release Date / No. 17 2017
コンシャス・ラッパーの第一人者と言えばこの男だろう。かつては盟友のモス・デフと共にインディペンデント・レーベルの雄であるRawkusのエースとしてアンダーグラウンド・シーンを盛り上げたMCのタリブ・クウェリがソロ名義としては約2年ぶりとなるスタジオアルバム「Radio Silence」をリリースした。個人的にはMCネームをモス・デフから改名したヤシーン・ベイとのデュオ=ブラック・スターのリユニオン作が先にドロップされると思っていたが(ここのところ再結成の噂が絶えなかった)まさかソロアルバムの方が先にくるとは。いやいや最近のクウェリの精力的な制作活動を見ると、このタイミングでのリリースも納得のものがある。前作「Fuck The Money」を2015年に発表して以降もトッププロデューサーのナインス・ワンダー、まさかの復活を遂げたア・トライブ・コールド・クエスト、「Malibu」で評価が急上昇したアンダーソン・パーク等々、いずれも注目を集める作品に参加しては相変わらずのリリシストぶりを見せつけたクウェリである。なかなかブラック・スター再結成のタイミングが合わずとも‘‘らしさ’’全開のこのアルバムの投下はアングラ好きのみならず、良質なヒップホップを愛するリスナー達にとっての一足早いクリスマスプレゼントになったのでは?まず今作からのリードシングル‘‘Heads Up Eyes Open’’ではゲストのリック・ロスに加えてシンガーのヤミー・ビンガムがゴスペル調のコーラスで華を添えてくれ、アルバムタイトルでもある‘‘Radio Silence’’では昨今のシーンの商業主義をさりげなく皮肉るコンシャスっぷりに一本取られ、オー・ノー制作の‘‘She’s My Hero’’では直球のサンプリングにニヤリとさせられただけでなく、Rawkus時代から相性の良いアルケミストや、昨年から勢いを維持し続けるケイトラナダも制作陣として参加。多彩なトラックもゲストのチョイスも筆者のツボを心地よく刺激してくれた。あー。こうなってくると早くブラック・スターの新作も聴きたい!
(DJ YU-1)
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