Release Date / Sep 22 2017
アメリカの音楽シーン、いや特にヒップホップでは顕著なのだと思うが、アーティストのプロモーションにおけるラジオ局の果たす役割が日本のソレとは大いに異なることを御存知だろうか?もちろん日本でもラジオは重要なメディアであり、主要なラジオ局には新曲のプロモーションに励むアーティスト達が毎日のように出入りする。だが日本の音楽史を振り返るとラジオ発信よりもテレビの歌番組や、CMのタイアップ曲から弾けたヒット曲の方がリスナーの印象に残っているのは間違いない。だが、それこそが日米の音楽シーンの根本的な違いではないか?そう、例えばニューヨークのHOT 97のようなラジオ局が次々と時代をリードしていき、一介のラジオDJがテレビ業界でいう大物司会者のようなプロップスを得るなんて日本からは想像出来ない事象だ。という訳で本題に入るが2000年代に正にラジオ局HOT 97から数々のヒットを飛ばした名物DJであるケイスレイのスタジオ・アルバムがとんでもないことになっている。これまでもコンスタントにMIX TAPEはリリースしてきたDJケイスレイだが、スタジオ・アルバムとなると約7年振り。この久しぶりの作品は全22曲で、なんと参加したゲストアーティストは60名以上!名前を見るのも懐かしいような面子もチラホラといるが、ここまでのアーティストを一枚のアルバムに集められるDJはケイスレイかキッドカプリくらいのものだろう。まったくどこから切り取るか悩むくらいのボリュームだが、アウトロウズ参加の‘‘Intro’’からノンストップで雪崩れこむ22曲は圧巻の一言。重厚感のある‘‘Jealousy’’での曲の入り方のカッコ良さも耳に残るし、‘‘Hip Hop Icon’’ではアイス・キューブにクール・G・ラップという東西の両雄が並び立ち、‘‘A Million Bucks’’では本当に久しぶりにファットマンスクープの煽りが聴けるだけでなく、リードシングルの‘‘Cold Summer’’では勢いのあるケンドリック・ラマーが参加とゲストの新旧のバランスの良さもアルバムの構成も絶妙だ。HOT 97を通じてシーンを支えてきたケイスレイだからこそ実現した豪華さからアメリカでのラジオ局の重要さが垣間見れるのもポイントが高い。ただ、今作はトラックのセンスや扱うトピックス等が2000年代初頭から停滞しているような気もする・・・その古さがまた面白くもあるが、好き嫌いは分かれるところか?
(DJ YU-1)
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