Xscap / Here For It

Release Date / Mar. 2 2018

90年代には、R&Bプロデューサーとしてはトップ中のトップであるジャーメイン・デュプリの全面バックアップにより華々しいデビューを飾った4人組のR&Bユニット = エクスケイプ。もちろん4人の歌声が織りなすハーモニーがシーンでウケた事も間違いないが、エクスケイプは当時のジャーメインの一大プロジェクトでもあったレーベル・So So Defからの第1弾アーティストという事もあり、デビューから瞬く間にスターダムへ駆け上がる。そのデビューシングルである‘‘Just Kickin’ It’’の大ヒットなんかは非常に懐かしいところだが、1998年にグループは解散。2005年にはリユニオンの動きも見られたが、この時は主要メンバーのキャンディが不在なうえにシングル‘‘What’s Up’’を1枚リリースしたのみの再結成未遂に終わってしまう。まぁ、解散後はこのような調子だったので、実は筆者としてはエクスケイプというグループの名前すら忘れかけていたが、今度こそはとばかりに再びリユニオン!とは言え今回もキャンディ不在の中、3人でのレコーディングとなってしまったエクスケイプだが、なんとか6曲入りのEPのドロップに漕ぎつけてきた。そんな今作「Here For It」にも収録されている‘‘Dream Killa’’、‘‘Wifed Up’’はEP内での事実上の先行シングルのような扱いだが、この2曲では往年を思い出させる絶妙なハーモニーを披露。グループのデビューから25周年を記念して制作したというだけあって両曲ともエクスケイプらしい美メロが楽しめる。しかし、それよりもインパクトが強い1曲がEPの表題曲でもある‘‘Here For It’’だ。まず聴いてみて、同曲のトラックがヒップホップ寄りなことは想定内ではあったが、まさか歌というかフロウまで完全にラップに寄せていることには驚かされた。クレジットを見ずに聴いたらエクスケイプの曲だとは思えないほどだが、この実験的な試みは嫌いじゃない。恐らくソロとしてもソングライターとしても成功を収めたキャンディ・バーラスが再結成したエクスケイプに合流することは無いだろう。そんな状況なだけにグループがこのEPをきっかけにアルバム発表まで辿り着くかは未知数ではあるが、‘‘Here For It’’のような新境地を開拓する地力があるエクスケイプの今後の活動に期待してしまったのは筆者だけではあるまい。
(DJ YU-1)

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