Will I Am / #WILLPOWER

Release Date / April 19th 2013
#willpower
By Kana Muramatsu
ブラック・アイド・ピーズ(BEP)の無期限活動休止発表から1年半。出ると噂されてからも延期続きで、誰もがウィル・アイ・アムのソロ新作を期待し待ち望んでいたのではないかと思う。常に先端をいき、時には先取りしすぎてみんながついていけないサウンドもたくさん発表してきた人だと思うのだが、この人の<意志(Will)>の強さはすざましいものを感じる。まさにアルバムタイトル『#WILLPOWER』=意志の力、そして、ウィルの力が物語っているように。
  
なんて自分で書いててもキレイごとすぎ&出来すぎなフレーズで笑ってしまうが、この人は昔から、全てにおいてふざけているように見えて、細部までとことん計算しつくしているように思う。<ふざけてる>というのは語弊もあるかもしれないが、<程よい適当感>とでもいうべきか。全く計算していないようで、どんなサウンドを作るかは当然ながら、リリックの内容も、誰をフィーチャーするかも、どうマーケティングしていくか、どう笑わせるか(芸人じゃないけど)、そして、彼の存在感の全てまで計算済みなのではないかと思う。そして、彼ほど<スタジオが遊び場>感をヒシヒシと感じさせるアーティストは少ないのではないだろうか。そんなところからも、その、<おふざけ>要素を感じるのかもしれない。よく私達が使ってしまう曖昧な「良質」という言葉。その受け取り方は人それぞれだと思うが、私は、良質にもいくつかの「良質」があると思っている。「良質なサウンド」、「良質な楽曲」、「良質なパフォーマンス」、そして、「良質なノリ」。ウィル・アイ・アムは、ソロであっても、BEPであっても、プロデューサーとしても、常に「良質なノリ」を提供してくれるアーティストだ。恐らく、作ってるウィル本人がめちゃくちゃ楽しんでいるのが伝わるからかもしれない。彼の曲を聴いていると、目の前の機械をいじくり、あっち触り、こっち触り、あっちを上げ、こっちを下げしながら、ニヤニヤしている彼の顔が浮かんでくる。
 
彼のソロ名義であり、彼自身ももちろん歌っているが、実際には、そのフィーチャリングの多さからも、彼のプロデュース・アルバムだと思ったほうがいいかもしれない。クリス・ブラウン(5)、ジャスティン・ビーバー(9)、Three6MafiaのJuicy J、そしてBEPでの仲間アップル・デ・アプ(6)という男性陣の参加も話題だが、何よりも、ブリトニー・スピアーズ(4)、マイリー・サイラス(12)、ニコール・シャージンガー(14)と豪華女性シンガー達だけでなく、まだ限られた人達にしか知られていないようなK-POPガールズ・グループの2NE1(6)から、youtubeで衝撃を与えた弱冠8歳のラッパー、ベイビー・カーリー(15)、他にもシンガーソングライターとして注目されている女性シンガー達を起用。なんとなく、BEPのファーギーを思い起こさせるヴォーカルも多い。もしかしたら、彼は第2のファーギーを探してるんじゃないかとさえ思うほどだ。
 
本作は頭から最後までが1つの作品かのように繋がってフロウしていくのも特記すべきだろう。そういう意味でも、実はどの曲がどうという解説は無意味だと思うが、彼の<おふざけ>度と<計算の高さ>を窺わせる1曲として注目すべきは、現在チャートをにぎわせているブリトニー・スピアーズをフィーチャーした”Scream&Shout”だ。この曲で、彼女が2007年に発表した”Gimme More”という曲で話題となった”It’s Britney, Bitch”(意訳すれば「ブリトニーよ、文句あんの?」)というセリフを連呼させている。ちょうど、今日本でも人気が出てきた米の大人気TV番組『Glee』で、元ビヨンセのダンサーであったヘザー・モリスが演じるブリトニーが、ブリトニー・スピアーズへのトリビュートをやったエピソードでのタイトルにも使われたのがこのセリフであり、ブリトニー・スピアーズもその番組のおかげで、再び注目を浴びるようになったイキサツもある。そういうシャレを上手く使うところも、ウィル・アイ・アムの魅力ではないかと思う。
 
打ち込みの楽曲ばかりではあるので、サウンド面では好き嫌いはあるかもしれない。リリックの内容もふざけた内容から<イジメ>や<世界情勢>に言及したパワフルなメッセージ性の高いものまで幅広くあり、子供から大人まで、音楽は作る側も聴く側も楽しみながらインスピレーションを与え受けるべきではないだろうかということが具現化されたアルバムという位置付けでは、間違いなく最強ではないかと思うのだ。

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