The Carters / EVERYTHING IS LOVE

Release Date / 16 June 2018

ジェイ-Zによる音楽配信の一大プロジェクトであるTIDAL立ち上げ以降、2016年にはビヨンセの「Lemonade」、そして昨年にはジェイ-Z自身のアルバム「4:44」と続けざまに素晴らしい作品を提供してきたカーター夫妻。いや、普段ならジェイ-Zとビヨンセの事をカーター夫妻なんて呼び方はしないが、今回は敢えてその様に表記してみた。そう、ビヨンセの「Lemonade」、ジガの「4:44」は実はカーター夫妻によるアルバム3部作の第1章と2章であり、今回発表されたザ・カーターズ名義の「EVERYTHING IS LOVE」にてこの3部作のフィナーレを飾るという大掛かりな仕掛けが隠されていたのだ。思い返せば「Lemonade」ではビヨンセはやたらと夫に攻撃的だったし、ジガが返す「4:44」はビヨンセに対するアンサーソングならぬアンサーアルバムのような様相だったが、全ては今作への伏線だったというわけだ。いくらなんでもここまでのスケールとは流石はハリウッドの国といったところだろうか。いや、それだけではない。この「EVERYTHING IS LOVE」はサウンド的にも大作の有終を飾るに相応しい出来栄えで、ちょっととんでもない事になっている。そんな今作の制作陣は、配信限定ながら事実上のリードシングルとなる‘‘Apeshit’’や‘‘Nice’’を手掛けたファレル・ウィリアムス、‘‘Friends’’や‘‘Heard About Us’’ではボーイ・ワンダ、その他3曲を担当したクール&ドレーなどの外部のプロデューサーとカーター夫妻の共同制作となっているが、事実上の制作のイニシアチブはジェイ-Zことショーン・カーターが握っているとしか思えない。あのジェイ-Z最大の傑作である「Blue Print」以降はサンプリングネタのセンスでも揺るがないプロップスを得たジガだが、「EVERYTHING IS LOVE」でも彼ならではのネタチョイスが見え隠れするのだ。その中でも特筆すべきは‘‘Boss’’、‘‘713’’あたりのトラックで、本当にロッカフェラ時代から続く彼のカラーが良く出ている。また‘‘Black Effect’’なんかはジガのクラシック‘‘Girls, Girls, Girls’’に通ずる暖かみのあるプロダクションで・・・そうそう、この‘‘Black Effect’’の元ネタは実は日本人のバンドだったりする。なんと御大 内田裕也のプロデュース、ジョー山中が率いるフラワー・トラベリン・バンドの‘‘Broken Strings’’がサンプリングされているではないか!本来こういった過去のドープなヴァイナルをディグる作業もヒップホップの大きな魅力の筈だが、デジタル全盛の最近のシーンではここまでプロダクションにはそうそう御目にかかれなかった。そういった視点からも今作はとんでもない事になっているのではないか?まぁ、こんな仕事をされてしまったとあっては、きっとビヨンセも「Lemonade」での怒りは水に流して夫に惚れ直した事だろう(笑)
(DJ YU-1)

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