Gregory Porter / Take Me To The Alley

Release Date / May 5 2016
希望へのアレイ
デビュー以来、発表した作品毎にグラミー賞候補に挙がる実力派は前作「Liquid Spirit」で遂にグラミー賞の最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム賞を受賞。そう、文字通りアメリカのジャズシーンを牽引していると言っても過言では無いであろうトップシンガーのグレゴリー・ポーターが約3年ぶりとなるニューアルバム「Take Me To The Alley」をリリースした。もちろん今作もジャズをベースとしながらもグレゴリー自身がマーヴィン・ゲイからの影響を公言するなど、ソウル / R&Bのフレイヴァを感じるのが他のジャズシンガーと一線を画すところだ。まるで円熟期に入ったベテランシンガーの様な大人びた作品となっているのだが、2010年デビューの割と最近のアーティストであり今作が自身4枚目のアルバムという事実に驚かされる。
前作「Liquid Spirit」から名門レーベルであるブルーノートへ移籍し、その結果キャリアを飛躍させたグレゴリー・ポーターであるが、実はアルバム制作に携わるメンバーはインディーズ時代から殆ど変わっていない。流行り廃りが激しい音楽シーンでは珍しい部類だろう。それどころか同じブラックミュージックでも常に新しい波が来て進化を続けるヒップホップソウル系のR&Bと比べると、常に同じメンバーとセッションし続けるジャズバンドは少し後進的に感じるかも知れない。しかし、筆者的にはその継続系こそがオーセンティックなジャズバンドの最大の武器に見受けられる。今作「Take Me To The Alley」も前作からガラっと変わったと言うよりは自身の作風を更に深く練り込んだものに感じるのだが・・・まるで彼に「デジタル化が進むR&Bも勿論カッコ良いけど、生音ならではのセッションも同じくらい魅力的なのだろう?」と諭されているようだ。確かに一曲のシングルが爆発的に売れ、社会現象になるような勢いは今作からは感じない。しかし、アルバム全体を通しての統一感は、そこらへんのヒヨッ子アーティストでは逆立ちしても出せないクオリティである。そのハイクオリティなグレゴリーの制作陣のサックス担当が日本人奏者の佐藤洋祐であることも驚愕の事実なのだが、あまり話題になってはいない事が実に残念である(笑)かなり誉れ高いことだと思うんだけどなー。
(DJ YU-1)

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