J Dilla / The Diary

Release Date / Apr. 15 2016
Diary
32歳という若さでこの世を去った鬼才、J・ディラ。今作はその彼の遺作となる。と言うのも「The Diary」は、ありがちな未発表作集という訳ではなく、2002年にディラ名義で発表する予定のスタジオアルバムだったのだ。当時ディラが契約を結んでいたMCA Recordsからリリース予定であった今作だが、ディラ自身の契約の破棄や、レーベル自体の消滅などの不運が重なり御蔵入りとなってしまったそうだ。そのままズルズルと時が経ち、陽の目を見ることが無かった今作だが、そんな状況に助け船を出したのがなんとあのNas(ナズ)。彼が2014年から運営するレーベルMass Appeal Recordsとの提携を結ぶことにより「The Diary」はようやくリリースに漕ぎ着けた。本来なら2014年には発表予定だったという今作が諸事情により発表の時期がずれ、2016年リリースになった事には何か運命的なものを感じずにはいられない。そう、今年はディラの死から丁度10年。節目というにはタイミングが良すぎるくらいの絶妙さだ。
そんなアルバム「The Diary」は、実はJ・ディラのラッパーとしてのアルバムなので、トラック制作には全体の半分くらいしか関わっていないのが最大のポイントだろう。それはディラといえばハードコア路線とは一線を画すトラックメイカーとしてのイメージが強いからだ。昨年発表されたスラム・ヴィレッジの未発表音源「Yes!」では、そんなディラのトラックメイカーとしての手腕を存分に堪能出来た。それに対し今作ではピート・ロック、マッドリブ、ハイ・テックといった名だたるプロデューサーのトラックにフロウを乗せるディラを楽しむ事が出来る。意外にも自身が制作するトラックよりもストリート寄りのサウンドとネイティヴ・タンの影響を多大に受けたであろうディラのラップの相性が良く、なかなか面白い事になっている。特にスヌープをゲストに迎えた‘‘Gangsta Boogie’’なんかはJ・ディラというアーティストのイメージからは想像も出来ないタイトルだが妙にハマっているのだ。だが個人的には1曲目の‘‘The Introduction’’の畳み掛けるようなラップの入り方が今作のハイライト。文句無しにカッコ良い。然しながらこんなアルバムが埋もれていたなんて勿体なさすぎる・・・彼の死から10年も経ってしまったが、もう一度彼の声を聴けた事はリスナーとして本当に幸せな事だと思う。R.I.P。
(DJ YU-1)

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