Beyonce / Beyonce

Release Date / Dec. 13th 2013
ビヨンセ(DVD付)
さすがに史上最高のアーティストと言われるに相応しく、次世代音楽産業のリリース手本となるだろうか、新曲14曲とその曲に基づく17作のビデオで構成された目と耳でアーティストを解釈するビジュアル・アルバム。5作目にしてリリースする全てのアルバムで全米チャート1位を記録。音楽関係者も含め全く何の告知もなく2013年12月13日にアメリカで発売、iTunesにて3日間で61万枚をセールス、全世界ではたったの6日間で100万枚以上を売り上げている。日本において情報が入ったのはかなり後のことで、国内の輸入盤が滞りなく買えるようになったのは1月に入ってからだ。対訳、解説付き、ブックレット式の日本盤は2月12日に発売予定。ビヨンセファンはこちらを永久保存版にするのが価値大だ。ビジュアルありきというのはYouTubeの普及以来、音楽を「聴く」から「見る」という行為に変化した結果でもある。それにより、ビヨンセが描いている感情や幻想、そして記憶が音楽へ現れていく工程がより繊細に届けられ、アルバム1枚を通じて、ひとつの映画として体験することが可能となる。まさか出産を終えたばかりの一人の女性に、これだけのパワーが蓄えられているとは考えもしなかったが、全14曲を聞く限り、容赦無しの作品がラインナップされている。まずは2014年グラミーアワードのオープニングでも夫のJay-Zとパフォーマンスを披露し、会場を総立ちにした「Drunk in Love」。プロデューサーは最近の仕事ではLil Wayneのスマッシュヒット“No Worries”を手掛けたNoel FisherことDetail氏。ローダウン系の最近のヒップホップ・トラックでこれに反応しない若者はいないだろう。夫Jay-Zと共に「愛に溺れる」という絶妙なタイミングを考えてもドハマリの曲である。個人的に今後アーバン向けにヒットする可能性がある曲としてドレイクのプロデューサーNoah Shebibが手掛けた「Mine feat. Drake」、そして昨年はプロデューサーとして再起を果たしたPharrell Williamsが手掛ける「Blow」辺りが有力とみているが、ポップ市場に向けたキャッチーな曲が思ったほどに少なく、今後どのようにシングル・カットを仕掛けてくるかは楽しみなところ。愛娘、ブルーアイヴィーに捧げた「Blue」を始め、ビヨンセの心の底を伺える側面も興味深い。是非とも彼女の思惑通りに、本作は映像とのリンクで新しい音楽の可能性を楽しみたい。

PAGE TOP